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八話 ライとギルドマスター

ライ視点です

初めて主人公以外の視点を書くのでおかしいところがあったりするかもしれません。


 今私はロクさんの様子を報告するためにギルドマスターの部屋の前に立っている。


(はぁ、緊張する……)


 最近はいつもこの部屋に来ているのだがやっぱり慣れない。


 ギルドマスターは全冒険者の憧れ。

 Sランク冒険者の一部の者だけがなれるとてもすごい職業。

 

 私も一応目指してはいるのだが……。

 全然AランクからSランクに上がれる気がしない。


 どれくらい強くならないといけないのだろうか。

 やっぱ複数の敵も余裕で倒せるようにならないと駄目か。


「はぁ」


 ああ、変な方向に考えが寄ってしまった。

 憂鬱だ。

 こんなところで突っ立っていないでさっさと報告をすましてしまおう。


 私は扉を軽く二回たたく。


「すいません。報告をしにきたんですが」


「お、その声はライ君か。どうぞ入って」


「失礼します」


 私が扉を開けるとそこには眠そうな顔で書類を見ているギルドマスターがいた。

 

 来るたびに毎回思うがこの人はそこら辺のチンピラにしか見えない。

 金髪にとげとげの頭、ちょっぴり生えている髭。

 おまけに煙草を吸っている。


「どうしたんだい?」


「い、いえ、チンピラにしか見えないなんて微塵も思ってませんよ!」


「君って天然だよね……。しかも重度の」


「?」


 ギルドマスターが少し落ち込んでいるように見えるが気のせいだろか?

 いや、仕事の疲れでそう見えるだけだろう。


「ギルドマスター! 頑張ってください!」


「? よくわかんないけど頑張るよ」


 ギルドマスターはにこりと笑う。

 私の思いが伝わったようだ。


「では」


 私は頭を下げて部屋から出て行こうと、


「待って! 待って! ロク君の報告にきたんだろう! なんで帰るのさ!」


「あ」


 そういえばそうだった。

 私はロクさんの報告にきたんだった。


「す、すいません。ちょっと疲れてまして」


「そうだね。とても疲れてると思うよ」


 他の人からでも疲れてるように見えるのか。

 今日は早く寝ないと。


 ……ギルドマスターの目が死んでいるのは何故だろう。


「じゃあ報告をします。ロクさんは昨日とあまり変わらず草茶を飲み、菓子を食べていました」


「草が好きなのは変わらないな……。他になにか変わったことは?」


「そうですね」


 んー、なんかあったっけ?

 ……………ああ!


「これはロクさんとあんまり関係ないんですけど」


「言ってみて」


「ロクさんに本気で勝負を挑みました」



「馬鹿!!!!」



「ひゃ!」


 ギルドマスターのいきなりの叫び声に私は心臓が一瞬止まるのを感じる。


「なんで勝負なんか挑んだんだい!」


「わ、私が勝ったらギルドに戻ってもらおうと……」


「二度とそんなことをするな! わかったか!」


「は、はい」


 ギルドマスターは怒気を収めたのかゆっくりと息を吐きこちらに頭を下げる。


「すまない。いきなり怒鳴ってしまって」


「いえ、別にいいですけど……」


 心臓が止まるだけですんだので。


「ありがとう。それで聞きたいんだがどうして戦うなんて考えに至ったんだい?」


「だってロクさん話を聞いてくれませんもん。だから無理矢理でもギルドに連れ戻そうと」


 ギルドマスター、なんで私を呆れたような目で見るんですか。


「相手はSランク冒険者だよ、挑むとき怖くなかったのかい?」


「ロクさん実は弱いんじゃないかと思いまして。全然怖くなかったです」


 体力が絶望的になかったですし。


「はぁ。これからはやめときなよ。あれでも強いから」


「わかってます」


「あともうひとつ、勝負を挑んだ後のロク君の様子はどうだった?」


「強烈な殺気を出していました」


 思い出しただけでも体が震える。

 今までの人生で一番恐怖を感じたかもしれない。


「……大丈夫だったのかい、それ?」


「はい。理由を話したら大笑いしてました」


 あれは大笑いって言うより馬鹿笑いって言うのかもしれない。



「これで僕からの質問は終わりだ、ご苦労様」


「はい。ご苦労様でした」


 私は頭を下げ部屋からでて行こうとするが、聞きたいがあることを思い出し足を止める。


「すいません。一つ聞きたいことがあるんですが」


「なんだい?」


「なんでロクさんはなんで殺気を出したんですかね?」


「それは君が本気で戦いたいと言ったからじゃ?」


「いえ、ロクさんは『今日はだらだらしたい気分』って言ったんです」


 私が思う限りロクさんは相当な気分屋だ。

 めんどくさいだけで私を魔物から助けなかったのだから。


 ギルドマスターもそれをわかっているのか顎に手を当てて考えている。


「……もしかしてだけどロク君は君に『誰かに命令されてる』とか聞いてきた?」


「はい」


「だったら多分ロク君は君が私に無理矢理命令されてると勘違いして殺気をだしたんだと思うよ」


「どういうことですか?」


「ロク君はね気に入ってる人が嫌な目に合うのがとても嫌いなんだよ」


 き、気に入ってる? ロクさんが私を?


「一切そんな風には見えませんけど」


「まずロク君と話せてることが奇跡なんだよ。どうでもいい相手だと話にすらならないからね」


「そういうもんなんですか……」


「そういうもんだよ」


 そうか、ロクさん私を気に入ってくれてるのか。

 なんか口がにやけちゃいますね。


「ありがとうございます! いい情報が聞けました!」


「どうも」


 私はうきうきしながら明日のことを考える。


 明日はどんな菓子を持って行こうかな。

ギルドマスターはエスパータイプ

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