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十七話 感動の再開

俺は思った、話ずれていってね?

 俺は昔……まだ冒険者をやっていた頃、暇な時に公園でライトノベルを読んでいた。

 たしか主人公が七年前に消えた幼馴染を探す物語だったかな。


 そのライトノベルでは幼馴染と主人公が何度も何度もすれ違う。

 同じ街に主人公と幼馴染がいるのに何故か二人共気がつかなかったり、隣の席に座っているのに何故か二人共気がつかなかったりな。


 俺はそれを見るたびイライラしたよ。

 早く会えや! 何で話してるのに気が付かないんだよ! って。

 至極当然な気持ちだと思う。


 でも俺は続きが気になって読み進めたんだ。

 イライラしながらもな。


 で、読み続けて最終話、二人は出会い抱き合ってハッピーエンドを迎えた。

 泣いたね、俺は泣いたね。

 もちろん最後にも感動したけど、こんなクソ小説を読み続けた俺に感動した。


 話は以上。







 …………え? 結局お前は何を伝えたかったんだって?


 おお、そういえば言ってなかった。

 話終えて満足してたわ。


 では改めまして、俺はこの話をみんなに聞いてもらってあることを知ってもらいたかったんだ。

 それは……


 すれ違いって大切やなって。








「ロク、お座り」


「え」


「お座り」


「はい」


 ははははははは、すれ違い通信したと思った?


 残念、現実はそう甘くない。

 ライトノベルみたいに何度もすれ違ったりしないのだ。


 そして……


「感動の再開を果たしたりはしない……」


「は? なに言ってんの?」


「イエナニモ」


 俺はシロと目と目が合った瞬間、一気に距離を詰められて捕まった。

 そうあれはまるで……新幹線のようだった。

 ……たとえが絶望的だな。


 まあいいや。

 俺の目でも追えないくらい速かったって伝えたかっただけだ。

 さすがは現役Sランク。


 ……で、この状況どうしようか。

 ……ワーク達に助けてもらおう。


 俺はちらりとワーク達がいる後ろを見る。


 そこには誰もいませんでした。


 逃げやがったなあいつら。

 今度会ったら覚えておけよ。


 俺がちらりと見ることも忘れて後ろをガン見しているとシロに頭を無理矢理戻される。


「な、なんでしょうか」


「ロク今までどこにいたの」


「……え、知らなかったんですか」


「早く答えて」


「ひっ! あ、悪魔の森の中の家にいました」


 こ、怖い……。

 とてつもなく機嫌が悪そうだ。

 足で地面をとてつもないスピードで叩いている。


「じゃあ次の質問。そこにいたときは何してたの」


「カーペットでゴロゴロしたり、ベットで気持ちよく寝てました」


「ふーん。他には」


「ほ、他ですか。えーと、インスタントラーメン食ったり、一人でハ〇ミズキを熱唱してました」


「他には」


「ほ、他?」


 何かあったっけ? 今ので全部出し尽くした気がするんだけどな。


「……思いつかないの?」


「そ、そうでございます」


「ふーん」


 シロはそういうと少し離れた場所にある草むらに近づく。

 そしてその草むらに手を突っ込み、何かを引きずり出す。


「この子は?」


「……ライお前何やってんの」


「い、いや、覗き見しようとかそ、そんなことはないですよ?」


 目をきょろきょろしていっても説得力ないぞ。


「じゃあこの子を見てさっきの質問に答えて」


「ん?」


 さっきの質問?

 家にいて何をしていたかだったよな。


 ……あ。


「そ、そいつと一緒に遊んだり、菓子を食ったりしてました」


「そう」


「ああ! 痛い、痛い! 頭が割れます!」


 ライがじたばたと暴れ始める。


 可哀想に、シロに頭を砕かれそうなんだな。

 南無阿弥陀仏。


 俺がなむなむと拝んでいるとシロがライの頭から手を放しこちらに近づいてくる。


「な、なにかようでしょうか」


「……この話はもう終わりよ」


「え?!」


 シ、シロの説教? にしては短いほうだぞ!

 やった! やった! ヤッ〇ーマン!


「……でも一つ頼み事があるの」


「仰せの通りに」


 解放されるなら何でも言うこと聞きますぜ姉貴。


「じゃあ……」


「はい」


「一発殴らせて」


 知ってた。

知ってた

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