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十一話 残念なお知らせ

「で、ここに何しにきたって?」


「ま、まだ股間蹴られて数秒だぞ……。腹が痛いから待ってくれ……」


「そうですよ……。少しでいいんで……」


「う、うむ……」


 チッ! 仕方ねえな。

 三十秒だけ待ってやるよ。


 ワーク達のおふざけを成敗した俺は若干スッキリとした気持ちで木にもたれかかる。


「ロクさん、ロクさん。あの人達大変痛そうなんですが大丈夫でしょうか?」


「大丈夫だろ。潰れてはいない」


 ちゃんと手加減して蹴ったからな。

 ……本気で潰そうか迷ったが。

 

「そうですか。それで今更なんですけどあの人達誰ですか?」


「言ってなかったけ? 昔からの友人のワーク、イーク、ルークだ」


「え、ロクさんって友達いたんですか」


 失礼な、俺だって友達くらいいるわ。

 ワーク三兄弟だろ? シロだろ? マス(ギルドマスター)だろ?

 あとは……。


 ……あれ? 俺って友達五人しかいなくね?


「おいおい、俺の友達少なすぎだろ……」


「何人いたんですか?」


「五人」


「まあ、妥当ですね」


 だ、妥当だと……。


「じゃ、じゃあお前の友達は何人いるんだよ」


 こんなチビに友達なんているわけないだろ。

 いても四人だな。

 ……いや、三人でお願いいたします(願い)。


「ふふふ、私に友達の数を聞くなんて愚かなロクさんですね。では教えてあげましょう! 私の友達を!」


 なんでそんなにテンション高くしたんだよ。


「えーと、パン屋のジュリアちゃん。服屋のタケルくん。魚屋のタカシくん。八百屋のマリーちゃん。家具屋のカイトくん。アイス屋のクラウンくん。あとはー」


「もうやめて!」


 皆さんお気づきだろうか。

 よくライが言った名前の欄を見てほしい。


 ……気づいたか? そう……。

 子供っぽい名前しかいないのだ。


 涙が、涙が止まらない!


「ロクさんなんで泣いてるんですか?」


「世界って残酷だなと思ってただけだ」


「?」


 お前にはわからないよ、この涙の重たさが。








「よし、やっと痛くなくなった」


「ほんとにやっとだな」


 俺とライが一通り話し終えたぞ。

 三十秒以上待ったじゃないか。


「じゃあ早く話せ。話すまでが長すぎだ」


 どんだけ尺取ってると思ってんだよ。


「わかったパパっと話す。俺達がここにきたのは母親の病気を治すためだ」


「お前らって母親いたの?」


「当たり前だろ! どうやって生まれてきたと思ってんだよ!」


 自然現象かと。


「でもここにきたって母親の病気が治るわけじゃないだろ? なにか探しにきたのか?」


「話が早くて助かるぜ。俺達はキメラを探しにきたんだ」


 あの芋虫に羽が生えたみたいなやつか。

 

「キメラって薬の材料になったっけ?」


「ああなるぞ。正確にはキメラの目だがな。石化病の薬になるんだ」


「石化病? ……体が徐々に石になる病気か」


 最初は足から石になっていきどんどん体を蝕んでく病気だ。

 結構珍しい病気だが……。


「街で薬売ってなかったのか?」


「それがな運悪く丁度売り切れたらしくてな。作るのにはキメラの目が一個足りないんだと」


「それは災難だったな」


「心にも思ってないこと言うなよ」


 何でばれたんだ。


「まあそれで俺達はこの森にきたって訳だ」


「そうか」


「グスッ、いい話ですね」


 なんで泣いてんだよ。

 泣ける要素全然なかっただろ。


「ロクさんは体内に水分がないんですよ。それで涙が出ないんです」


「あるわ」


 体内に水分がないってどういうことだよ。

 俺はバケモンか。


「で、キメラは見つかったんですか?」


「いや、見つかる気配が全くしねえ。この森にいないんじゃないかと疑うレベルだ」


 ……ん? あれ? そういえばキメラって……。


「……お前らこの森にキメラがいるって誰に聞いた?」


「? 情報屋からだが?」


「ああ……」


 俺は額に手を当て座り込む。


「……おい。その反応はなんだ。嫌な予感がしてきたんだが」


「お前らの勘ってすごいな……」


「やめてくれよ! 可哀想な目で俺を見るな! まさか……」


 お察しの通り。


「この森にキメラはいないぞ」


 今思い出しました。








 俺がキメラは森にいないぞと打ち明けた瞬間ワーク三兄弟が暴れだしたので、暴れるこいつらを無理矢理引きずり俺の家へと連れてきた。


 こいつら森の中だってこと忘れてんだろ。


「くそー! 情報屋に騙された! あの野郎、次見かけたら覚えておけよ!」


「うわー! 大金払ったのにー!」


「う、うむー!」


「うるせーよ」


 耳に響くわ。

 あとイークお前『うむ』以外の言葉喋れるだろ。

 普通に悔しがれや。


「でも可哀想です。お母さんのために必死にキメラを探してたのに……。ロクさんもそう思いますよね?」


「そうだな」


 憐れだとは思うかな。


「ですよね! じゃあ私達も手伝って……」


「嫌だ」


 何故俺が手伝わなきゃいかんのだ。

 俺に関係ないだろ。


「もう!」


 ライは机を叩き立ち上がると俺の座っている椅子を引きずりワーク達の方へ歩いていく。


「ワークさん私達も手伝います!」


「おお! ありがたい!」


 ……ふー、思ったんだけどさライってシロに似てきたよね。

人って変わるんだね(にっこり)

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