十話 ライひかれる
いきなり戦闘です
「で、お前らなんでこんなところにいるの?」
俺はワークからもらった水を飲み干し空になった水筒をそこら辺に投げる。
「うおおい! ペットボトルならまだしも水筒を投げるってなんでだ! 俺のだぞ!」
「そんなのどうでもいいから答えろよ」
「どうでもよくねーよ!」
ワークは立ち上がり水筒を取りに……って、あ。
「ワーク」
「どうした?」
「そこの草むらから魔物が出てくるぞ」
「あぶな!」
ワークは体を伏せギリギリのところで避ける。
出てきた魔物は……狼。
名前忘れたわ。
確か一体の強さはこの森で一番弱かった気がするな。
二番目に弱い魔物に瞬殺されるレベルだ。
特に珍しい能力もない。
しかし……。
「「「「グルルルル」」」」
「こいつらって集団行動するんだ」
「説明してる場合かよ!」
周りから数十体の狼がゆっくりと出てくる。
ああ、囲まれちまった。
「これ多分だけどだいぶ前からつけられてたな」
「え?!」
「お前らここまで魔物に一体もあってなかったろ?」
「お、おう」
「こいつらが狙ってたから他の魔物に襲われなかったんだよ」
まあ、獲物を横取りしようとした奴もいたみたいだけどな。
よく見ると数匹の狼が傷を負っている。
なんとか追い返したってとこか。
「質より量ってやつだな」
「急に何言ってんだよ! やばいって!」
「ん?」
気が付くと先程よりもあきらかに近づかれている。
「ロク! お前Aランク冒険者だろ! なんとかしろよ!」
「冒険者じゃないっつーの」
「え? 冒険者やめたの?!」
ワークお前この状況でそこに食いついてくるとか余裕じゃないか。
というか知らなかったのか。
まあ教えてないし知らなくてもおかしくないか。
「ロクさん! 本当にやばいですよ!」
「う、うむ」
俺達の横で必死に狼達を牽制をしていたイークとルークがもう限界だと感じたのか慌ててこちらにやってくる。
「役に立たないな」
「おかしいでしょ! 頑張って魔物を食い止めてたのに!」
俺はイークを無視して周りを眺める。
んー、どうしよかなー。
今は気分じゃないしなー。
誰かー、カモーン。
俺は地面に寝転がる。
「どうしてそんなに余裕なんだよ! 魔物がそこまできてるんだぞ!」
「まあまあ見とけって」
俺は大きく息を吸い込み、
「おーーーーーーい!」
叫ぶ。
すると空から小さな黒い物体が降ってきて、地面に着地する。
「どうしましたロクさん!」
「……そこにいる魔物を倒してくれないか」
「はい!」
小さな物体ことライは笑いながら頷き、闇に消える。
するとライが消えた直後あちこちから魔物の断末魔が上がる。
「お、おい、誰だよあの女。あれがお前の余裕の理由か?」
「まあな」
俺はワークの質問に軽く答え、狼たちの方を向く。
……今の俺って余裕そうに見えるか? 実は超驚いてるんだぜ。
……だってほんとにライが来ると思ってなかったし。
正直結構ひいてる。
「どうでしたロクさん! 私の戦いは!」
「背後から襲うなんてせこいと思いました」
「え?! 戦いにせこいとかないって前言ってませんでしたっけ?!」
知らんな。
そんなこと言った覚えはない。
「素直に褒めて下さいよ! 私の姿見えなかったでしょ!」
「消えた後一番高い木に登り辺りを見渡して状況把握。それから左から三番目の狼に背後から切りかかる。次はその隣の隣の狼の首を……」
「うあああああ! 何で見えてるんですか!」
ははははは、本気をだせばお前の姿なんか手に取るようにわかるわ。
上には上がいるってな。覚えておけ。
俺がうずくまるライを笑った目で見ているとワークが肩を叩いてくる。
「どした」
「いや、助けてくれたっぽいから礼をと思ってよ。ありがとよ」
「気にすんな」
俺が助けた訳じゃないしな。
「それで聞きたいんだがあの小さな女は誰だ?」
「ああ、あいつか。そうだな……」
……あいつって俺の何なんだ?
いきなり家に押しかけてきて、魔物から助けてくれと言ってくる女。
そのあと俺と草茶を堪能して(してない)菓子を食う女。
そしていきなり勝負しましょうとか申し込んでくる女。
ふむ……。
「草友かな」
「え、お前の草に理解を示す奴なんていたのかよ……」
俺とワークは理解しがたい目でライを見る。
「ちょっと! 草友じゃないですよ! 訂正してください! ていうか何でロクさんまでそんな目で見てるんですか!」
「ノリだよ。ノリ」
これだから最近の若い子は。
ノリの概念でも失ってんじゃねーか?
「さてと草友の件は一旦置いといて、また聞くがなんでお前らこんな危険なところにいるんだ?」
「そうですよ。一般人は立ち入り禁止なはずです」
え? そうなの?
「俺って一般人に入るのかな?」
「一般人は私の戦ってる姿が見えることなんてありません。話を遮らないでください!」
「そんな怒るとしわが増えるぞ」
「え?!」
ライは顔をぺたぺたと触り、顔を青くする。
「確かに増えてる気が……」
「増えるわけないだろ」
「なんですかもう!」
ちょ、足を蹴るなって。
歩けなくなったらどうしてくれんだ。
俺がライの蹴りを避けているとワークが恐る恐ると手を上げる。
「あのー、もう言っていいか?」
「おお、すまん。こいつが話を逸らすもんでな」
「ロクさんです! ……もういいです。早く言ってください」
「じゃあ……」
ワークはイーク、ルークと顔を合わせ頷き口を開く。
「「「待たせたな」」」
「死ね」
俺はワーク達の股間を蹴り上げた。
ま、待たせたな(最近最後の言葉が思いつかなくて苦しい)




