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一話 草を食う男

「あー、だりー」


 沢山の人で賑わう街タート、その中の公園で俺は草をむしゃむしゃと食いながら一人ベンチで横になっていた。

 昼頃なので普段よりも人通りが多く、公園にも元気な子供達が沢山集まってくる。


(子供はいいなぁ。働かなくていいもんな)


 俺が子供の頃は逆に働くっていいなって思ってたが全然そんなことなかった。

 天国じゃなくて地獄だった。

 

 俺は冒険者をやっているんだがこれがくっそめんどくさい。

 EランクからSランクまであるんだが、俺は今Aランク。

 あ、もちろんEランクが一番下でSランクが一番上な。


 それでなBランクから冒険者にある義務ができるんだよ。

 それは毎日どんな依頼でもいいから依頼を一つ達成すること。

 これが本当にもうな……。


 依頼をこなすのって楽じゃないんだぜ?

 一番簡単な薬草採取をするのにも多少の力と腰を動かすのが必要になるし、魔物の中で最弱のゴブリンを討伐するのにも腕を振るわなきゃいけない。

 

 ああ勘違いするなよ、腕を振るっただけで倒せるのは俺ぐらいになってからだ。

 俺はこう見えても意外と強いんだぞ。

 ギルドマスターからお墨付きをもらってるぐらいだ。


 は? ギルドマスターって何だって?

 それはあれだよあれ、みんなの友達だよ。

 お前らも金髪の兄ちゃんを見かけたら声をかけてみな、飴ちゃんがもらえるぞ。


「わかったかガキ共、わかったならさっさとあっちで遊んで来い。俺は暇じゃないんだ」


「ねえねえ、暇なお兄ちゃん。なんでいつもここにいるの?」


「暇じゃねえっていってんだろ。まあいいや、俺はある怪物から逃げてきたんだ」


「怪物?」


「ああ、桃色の髪の色をした女でな、いつも怖い顔をしてるんだ。おまけに俺には暴力をふるってくるし最悪だよ。聞いてくれよがきんちょ、あいつな小さい頃におもらししたことあるんだぜ。別におもらし自体は全然悪いことじゃないんだけどな、あいつなにを思ったのか必死に言い訳し始めたんだ。私はしてない、汗がいっぱいでたんだってな。俺もう大爆笑。腹がくそ痛くなっちゃってさ、俺まで漏らしそうになっちまったぜ。それとな……」


「ねえねえお兄ちゃん」


「あ? また質問か?」


「んーん、後ろに怪物がいるのに逃げなくていいのかなーって」


「へ?」


 俺が間抜けな声を出すと同時に、馬鹿みたいな力で頭を掴まれ持ち上げられる。


「ねえロク、いつも子供達にこういう話してんの?」


「ひ、ひえ。してないしてない! 俺は冒険者がどんな感じか教えてあげているだけの優しいお兄さん! まさか誰かの秘密をばらすなんてこと」


「面白いお話をしてくれるよ! 前はね、トイレに閉じ込められて泣きわめいた女の話とか、自分には剣の才能がないのに頑張って剣の練習をする無謀な女の話とか! 後はね……」


「へー、私にも聞かせてほしいなその話」


「こ、この話は子供限定です」


「あ?」


 はい、これは死にましたわ。






「で、私早くギルドに来いって言ったよね?」


「おっしゃりました」


「それでロクはなんて言ったんだっけ?」


「少しこの公園で休んでからすぐに行くと」


「そうだよね、そういったよね。それがどうしてこうなってんの?」


 シロは相当怒っているのか地面をカツカツと鳴らしている。


「子供達に冒険者の大変さを教えているところについ口からポロリと」


「ポロリ?」


「すいません、意図的にでございます」


 すぐに本当のことを言うなんて男らしくないと思ったそこの君、目の前にモノホンのナイフを刺されてみたことある?

 俺はある。今刺されました。


「だよね、それで私になにか言うことあるでしょ?」


 言うこと? ああ。


「外でおしっこ漏らしたことを言い忘れてまし」


「死ね」


「あぶ!」


 俺が咄嗟に横に飛ぶと俺の頭と飛んできたナイフがすれ違う。


「な、何すんだばっきゃろー! あれは死んでたぞ!」


「いつもそう言いながら死んでないじゃない! なんで当たらないのよ!」


「聞きました? 聞きましたか皆さん! おまわりさんこっちです!」


 犯罪者がでましたよー! 確信犯です! 逮捕です!


「あら? またやってるの、あの二人?」


「いつも昼頃にはやってるわね」


「私あのコントが最近の楽しみなの」


「でも危なくない? あのナイフ?」


「大丈夫よ、シロちゃんはSランク冒険者なんだから」


 そこの主婦の方々! 呑気にしゃべってないで早くおまわりさん呼んで!

 今度は外さないとか言いながらこっちに怪物が迫ってきてるから! 早く!


「まあまあ落ち着けよシロさん」


「そうですよ、ロクさんにナイフが当たらないことぐらいわかってるでしょ?」

 

「いったん冷静になれ」


 俺がもうだめだと絶望していると目の前に三人の影が現れた。

 お、おまえらは……。


「ワーク、ルーク、イーク!」


「「「待たせたな」」」


 この三人は俺の昔からの友達で上からワーク、ルーク、イークの三人兄弟だ。

 こいつらの得意技にはいつもお世話になっている。

 こいつらの得意技は……。


「シロさん、ロクさんだって悪気があってやった訳じゃないんですよ」


「そうだぞ。誰にだって失敗はあるからな」


「うむ、ロクは昔から失敗が多いからな。大目に見てあげてもいいんじゃなかろうか」


「そ、そうかしら?」


 即座に人をなだめることらしい。

 くだらない特技だと思うだろ? 実はそうじゃないんだよな。

 こいつらの本当の姿はここからだ。


「それよりなにかロクに話があったんじゃないんですか?」


「急いでる様子でしたけど」


「うむ」


「そうだったわ。ロク早くギルドに行くわよ。ギルドマスターが呼んでるわ」


「おう」


 話を違和感なく完全に逸らせるところだ。

 これで俺はいつも九死に一生を得ている。


 俺はシロに手を引っ張られ連れていかれてる途中に後ろに金貨を投げる。


 これからもよろしく頼むぜ。

ワークが少しチャラい言葉遣い。

ルークが丁寧な言葉遣い。

イークがうむという言葉遣いです。

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