第23話 エピローグ
真理子表記→現実の場面
サーシャ表記→ゲーム内の場面
今更ですが補足しておきます。
真理子は、鳴り出した携帯をあせって取り上げた。
クロトからのメールだ。
『さあぁあぁぁぁあしゃ、いつまで寝てんだ早く来い!!』
寝てないし···。真理子はクスっと笑う。真理子の足元に、小さな犬がまとわりつく。
「今お散歩行ったばかりでしょう!?さぁしばらくいい子にしてて。私はこれから忙しいのよ!」
そう言うと、ダイブシップに入っていった。
蓋を閉める前に犬に言う。
「今日はPvPの日なの。おまえも応援しててね!」
ワン!尻尾を振って返事する犬。
真理子はログインし、サーシャになった。
途端に通話が3個。
ひとつはモンジ。
「サーシャさん。待ちわびましたよ。もちろん貴方が約束を違えるとは思っていませんでしたが」
サーシャは答える。
「そもそも今回のPvPは約束すら存在しないぞ、モンジ氏」
モンジはしれっと
「そうでしたか?では、お待ちしております」
もう一つはギミク。
「サーシャ、今回は負けねぇ。俺の装備の味を、お前に味合わせてやるからな!」
サーシャはニヤリと笑う。
「私より先に、皆に味合わせなければならないぞ。耐久がもつといいがな」
最後はクロト。
「サーシャ遅ぇ!!もう先にインダコに来てっからな!」
後ろにすごい数の人々が見える。今回のイベントも盛況なようだ。
「あぁ。私はそのまま関係者の席に行くことになるだろう。落ち合うのは終了後になりそうだ」
クロトは通り過ぎた爆乳バニーガールに目を奪われている。
「あぁ、俺は俺で楽しむよ。健闘を祈ってるぜ!」
どうだか···。サーシャはため息をついたが、肩にセラルを乗せ、顔は明るい。
「レディースエンドジェントルマン!!本日はお集まりいただき、まこと光栄!ワタクシが!桜!一文字であります!!!」
マイクで拡大されたモンジの声が、会場いっぱいに響き渡る。相変わらず、モンジー!!との掛け声。彼が正式なキャラ名で呼ばれることはなさそうだ。
それでも忍耐強く、モンジは言う。
「どうぞ、皆さん、さくらいちもんじ、とお呼びくださいませっ!」
盛大な花火、きらめく紙吹雪。愛想を振りまくバニーガール。そんな中で今回も始まる。
モンジはマイクを持つ手に一層力を込めて大きく息を吸う。
「さぁ、皆さん、お待ちかね、第二回The victor of a battle ここに!開催!いたします!」
ワァァァ···と、バトルは開始された。
ギミクもいた。今回はリリも出場している!中々に強い。いつの間に···。サーシャは身を乗り出す。アリフィスもいる。黒狼も。やはり、かなり手強いようだ。
そして、サーシャは目を見張った。クロト!
なんとクロトも出場している。知らなかった!あいつプレイヤーバトルできるのか···?
何時間も死闘が繰り広げられ、次の勝者がサーシャと戦闘する。という所まできた。
準決勝。残ったのは、ライトとクロトだった。
〈Buff Time〉 バトル開始まであと2:00···
開始直前、ライトが何やらクロトに話しかけている。
が、会場が盛り上がっていてサーシャには聞こえない。
クロトが何か言い返す。そしてまたライト。クロトが剣を持ち直す。
何を話しているんだ···。サーシャは訝しんだが、バトルが始まりそちらに集中した。
ものすごい剣技の応酬だ。双方一歩も引かない。今までのバトルも、もちろん皆本気で、優勝をかけて戦っていた。が、今の二人の迫力と比べると、学芸会みたいに思えてくる。
最終的に泥仕合になった。何もそこまで···と思う程、食いつくクロト、そしてライト。
長い戦いは遂に終わりを迎える。
勝者 クロト バトル終了
システムログが勝者を伝える。
「!!」
サーシャは両手を口に当て、クロトの傍に駆け寄りたい気持ちを抑えていた。
稀に見る激闘ぶりに、モンジは予定を変更し、一時間の休憩を設けた。
サーシャはクロトの元に行きたかったが、次に彼と戦うのは自分だ。ここは遠慮したほうがよいだろうと考えた。後でゆっくり話そう。
そんなサーシャの元に、ライトがやってきた。
「いやぁ〜、まいった。勝つ気でいたんだがな···」
ライトはサーシャの肩に乗るセラルの鼻をつつきながらそう言った。
サーシャは素直に賞賛する。
「すごい戦いだった、お疲れさん。さすがだな。どちらが勝っても不思議はなかったぞ」
ライトはサーシャに頷く。
「あいつはすごいな。さすが、と言うべきかな」
サーシャは首を傾げる。
「あんなアイツを見たことがないぞ。いつでも楽しければそれでいい主義だ。今日はどうしたんだろうな」
ライトは笑っている。
「あぁ、必死にもなる。何しろお互いが、命より大事なものを賭けたからな」
命より大事なもの···?サーシャは怪訝な顔をする。
「おまえらが親しいとは知らなかった」
ライトは首を振る。
「いいや、直接話したのはさっきが初めてだ」
そして、「健闘を祈ってるぜ」と言って、ライトは去っていった。
初対面で、お互いの大切なものが一緒?そんな事が起こるのか···?
サーシャには意味がわからない。
そしていよいよ、頂上決戦の時間になった。
両者、サイドから入場する。
サーシャはいつになく緊張している。相手がクロトだろうが、手加減などしない···。目にモノ見せてくれよう···。
〈Buff Time〉バトル開始まであと2:00···
サーシャは剣を持つ。そして補助スキルをかけようとしてクロトを見た。
クロトは腰に手を当て突っ立っている。
「?」
サーシャは不思議そうな顔をした。するとクロトが言う。
「サーシャ!少女グラフィックを選択したことを、今日この場で後悔させてやろう!味わうがいい、青年グラフィックの筋力を!!」
そして剣を上に掲げ、勝利のポーズをとった。
ほぅ···、とサーシャもスキル詠唱をやめる。
純粋に、剣で勝負ということだな。
受けて立とう、とフンと鼻を鳴らしたサーシャは
「大きな口を叩くのは、ベースレベルが3桁に乗ってからにするんだな」
と言った。
ピィーン、バトル 開始!!
ザッ!とサーシャは動く。クロトも走る。
二人はただ真っ直ぐにお互いの元に走り寄り、
ギィィィィン!
と、その剣と剣を合わせた。
ワァァァ!!!と会場が沸く。
モンジのイベントは、今回も大成功に終わるだろう。
ここはラーミャ。人々の夢が叶う場所。
少女になることもできる。
鍛冶屋になることもできる。
エンターテイナーになることも。
健康な体を取り戻すことだって。
そして、生まれた鬼を消去することすら、
できる、世界。
場所は変わって、ここはサーシャの自宅。
サーシャがいつも座る机の上に、銀の腕輪が飾ってある。
純粋無垢な、あの日の少女の頬を、太陽の光に、きらめかせながら。
これにて『ラームフルオンライン』本編を完結といたします。
ここまで読んでくださった方に深く感謝いたします!!
こちらの作品は後日談のような続編があと3シリーズございます。追い追い公開していくつもりですので、ぜひ合わせてお楽しみ下さい!




