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第20話 アミューズメンティング

翌日、朝っぱらからクロトはサーシャの家に押しかけてきた。

「おはよ〜さん、今日は行きたい所があるんだ」

サーシャは、実は狩りに行く準備をしてクロトを待っていたのだが、あぁ···と頷く。

「そうか。わざわざ私に許可を取る必要はないぞ。私なら問題ない」

クロトはサーシャの言葉が聞こえていないのか、ケロっと言う。

「サーシャ、お前EPって何ポイントある?」

いーぴー?なんだそれは···。

サーシャがキョトンとした顔をしていると、クロトは冷や汗をかく。

「ウソだろ···マジか。EP知らねーの?」

サーシャはコク、と頷く。

「何かに使う物なのか?」

クロトはサーシャに「信じられん」という顔を向けながらも、手で鉄砲のような形を作ると、「パン」と動かす。すると、指の先からちょっとだけ紙吹雪が出た。

「こういうネタっぽいEPスキルってのが覚えられるようになるんだ」

ショボいな···。というサーシャの顔色を読み取ったのだろう、クロトは

「まてまて、まだあるぞ。こんなの序の口だ」

と、今度は両手で丸を作り、上を向いた顔の前に持ってくると、フッ!と息を吹く。すると


 ド······ッッッカァァァァン!!!


と、サーシャの家の中で花火が炸裂した。

キィィィン、と耳鳴り。ものすごい迫力だ。サーシャは目をパチパチさせながら言った。

「威力はわかった。家の中でやるものじゃなさそうだ···」

クロトも耳に手を突っ込み

「あ、あぁ、結構派手だったな」

と目を白黒させている。

「ネタスキルなのはよくわかった。使い道は···なさそうだがな···」

とサーシャが言うと、クロトはグイッとサーシャの身を寄せ背後から抱きついた。

「···っ!」

サーシャは固まる。ふと見ると、頭上からフワフワと雪が舞い降りてきている。

綺麗···。思わず見とれていると、クロトがサーシャの耳に顔を寄せ、優しく囁いた。

「ホラ、使えるだろう?もっともこれは···」

くっと笑うと、クロトは

「中身が女の子じゃないと通用しないけどな」

と言った。サーシャはクロトの腕を振りほどくと、部屋の端まで移動した。顔が、耳まで真っ赤になっている。

「い、行く所があると言っていたな。とっとと行け!」

カラカラとクロトは笑い、サーシャの右手を取る。

「あぁ、じゃあ行こうか!」

「え?な···っ、ちょ!」

リバーシ!クロトはサーシャと共に移動した。


クロトが転移したのは、ブルという街だった。

「2年くらい前かな。ここの先に遊園地ができたんだ。そこで乗り物に乗るとEPが稼げる。まぁ、一日遊べばある程度は稼げるだろ」

歩きながらそう言う。

遊園地···。サーシャは周りを見渡す。遊園地なんて、リアルでも何年···ヘタしたら10年くらい行ってないかも···。

見ると入口でクロトが窓口に向かっていた。

「二人分くれ〜い。そ、フリーパスってやつ」

戻ってきたクロトにトレードを出す。

「いくらなんだ?」

クロトはサーシャに券を渡すと

「男キャラが出すのがジョウシキだろ」

と言うと、鼻歌交じりで遊園地に入っていった。

「ここはな、サーシャ。同時に券を買った者単位でマップが形成されるんだ。いつでも貸切なんだぜ」

クロトはなんだかとても偉そうに説明する。

サーシャは、へぇ、と周りを見渡す。

そこは、見た目こそリアルの遊園地と同じだが、乗り物の迫力が段違いだった。

「キ···キィヤァァァァァ!!」

崖からヒラリと飛び降りるサーシャですら悲鳴を上げるジェットコースター。

クロトはというと、隣で爆笑している。

3分程の地獄を味わい、サーシャはもうすでにフラフラ。

「よし、次だ」

灰のようになっているサーシャの手を引き、今度はフリーホールへ。

「ひぃいぃぃぃえぇぇぇぇ!!!」

サーシャは、ここでデッドするかもしれない、と覚悟を決める程やばかった。

クロトは相変わらず大爆笑。

終わると、もうサーシャはクロトにしがみつかなければ歩けない程になっていた。

「よし、次はそうだな···」

そんなサーシャに、冷徹にクロトは次の乗り場に行こうとしている。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ···」

サーシャは近くのベンチに座ると、息をついた。

「なんだよ、だらしないなぁ。ドンドン乗らないとEP稼げないぜ?」

とクロト。サーシャは、

「少しは落ち着いてゆっくり行けないのか?クロトはここに来た事があるのだろう?」

と言った。クロトは首を傾げる。

「ここに来るのは初めてだぜ。俺のEPは釣りで稼いだからな。これでも結構釣りスキルは高いんだ。海釣り夜釣りなんでも来いだ」

へぇ、来た事がないとは意外だな···。

「真っ先に来たがりそうなのにな···」

とサーシャが言うと、クロトは不思議そうな顔をして言った。

「遊園地ってのは自分が来たがる場所じゃないだろ。誰かを連れてきたい場所じゃんか」

···そうなのか?サーシャにはよくわからない。

「よし、次はあそこだな!」

と、クロトはまたしてもサーシャを引っ張り、倉庫のような建物に連れ込む。

そこは『お化け屋敷』だった。

「···!······!!······っ!!!!」

サーシャはあまりの怖さに、途中からクロトにしがみつき、目を閉じクロトの腕に顔を埋めながらでないと歩けなくなってしまった。

「サーシャ、おぉ〜い、サーシャ?大丈夫かぁ、もう出口だぞ」

明るい外に出ても、サーシャはクロトの腕から離れられずにそぉ〜っと顔を上げる。

「泣く子も黙るサーシャ様に、苦手な物があるとはな。驚きだぜ」

クロトは楽しそうに笑っている。

くそ···。今度背後から一発でノしてやる···。

それから二人は、丸一日乗り物に乗ってEPを稼ぎ時間を潰した。

リアルの時間で日没を迎える頃、遊園地マップも夜を迎え、空には花火が上がった。

クロトは「た〜まや〜」と叫んでいる。

サーシャは上がっては消えていく花火を、ただひたすら眺めていた。

しばらくするとクロトは左手を出して言った。

「さて、そろそろ帰るか」

サーシャはその手に右手を乗せ

「あぁ、そうだな」

と、言った。

家につくとクロトは

「じゃぁな。明日も早いぞ、覚悟しておけ!」

とサーシャを指差すとそのままログアウトしていった。

サーシャはぐったりと疲れ、もう何もする気も起きないし、何かを考えるのもおっくうに感じ、そのままログアウトすると深い眠りに落ちた。

久しぶりに。

次回2/28更新


ー用語解説

EPシステム:レベル、スキル、ステータスとは全く異なる、LFOを楽しむ為の色々が盛り込まれているシステム。これが充実している為、人は狩場に長居しない。

サーシャがシギアといた頃はまだ実装されておらず、実装された頃にはサーシャには目的があった為、見向きもしなかった。

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