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将軍様、と呼ばれるのは――否、そう呼ぶのは、この世界でたった一人だ。
部下であれば、閣下と。仕える主人であれば、男の爵位を。
長年の友と、気の知れた側近であれば、名を。
闇が広がるのは、夢の中にいるからだと知っている。
夢、ならば。今この時だけは許されるだろうか。
呑み込んだ言葉を吐き出し、握りしめた手を――伸ばしようもなくとらわれた腕を、衝動のままに振るうことが。
竜を知らぬ娘。何も知らない少女。空と雲と海に焦がれ、質問ばかりが男に飛ぶ。その背中を、いったい何度ただ見送ったか。
連れて行ってやると、口をついて出そうになった。竜の背に乗せ、望みどおりに遠い空へ。
ここにいろ、と腕を捕らえたかった。
閉じた世界がどれ程歪んでいるかを、すべてを吐き出してもいいから気づかせたかった。
逃げてくれと、背中を押したかった。
入り口にさえなれない、どこまでも閉ざされた暗い闇の中。
留まるのではなく、限りなく広い外へ。
たとえ、ここだけが外を知る唯一の窓であっても。
救い出そうにも、縛られた両腕では差しのべる掌さえなく。
その掌を差し出す権利すら、己にはない事を知りながら。
頼む、と。
何処にもいるはずのない神にすがりつきたかった。
こんなはずではなかった、と嘲笑う自分が、ひっそりと立っているのも知っている。




