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ここにいろ、とは言えない。
少しでも何か――
外へ、向かうきっかけに。
逃げ出す決意を見せてくれと。
ここにいて、気づいてくれ、と願う。
閉じた世界が、どれ程歪んでいるかを。
そのためなら、すべてを吐き出したっていいから。
入り口にさえなれない、どこまでも閉ざされた暗い闇の中。
それでも、ここだけが外を知る唯一の窓のはずだと。そう信じている。
救い出そうにも、縛られた両腕では差しのべる掌さえなく。
頼む、と
何処にもいるはずのない――神にすがりつきたくなるほど。
こんなはずではなかった、と嘲笑う自分が、ひっそりと立っているのも知っている。
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「朝は四本、昼は二本、夜は三本。これな~んだ?」
「…………」
「あれ、知らない?」
「……」
「偉い将軍様、知らない? 有名ななぞなぞよ。当てたら次、問題出してね。出し合って当てっこして遊ぶん――」
「……お姫さんよ」
一段と低い声が、地を這うように言葉を遮った。
「なあに?」
「それは、今、ここで、俺とせにゃならんことか?」
苦渋に満ちた問いかけに、コロコロと笑い声が返された。
「別に、今、ここで、しなくてもいいのよ」
「だったら……」
「でも私、今、あなたと、遊びたいの。そうすると、出来ることって限られるでしょう? カードもダメ。ボードもダメ。絵合わせはいいけれど、見えづらいし。本は……好みがあるでしょう?」
「部屋に戻れ、今すぐ」
そんな配慮はいらない、と男は思う。が、駄目よ。と明るく一蹴される。
「今帰ったら、ダンスの時間なの。またお兄様の足をいやってほど踏んじゃうわ。それに私、あの先生はあんまり好きじゃないのよ。国で一番踊りが上手なんですって。だから厳しいのかしらね、すぐつねるのよ」
「……尻尾巻いて逃げてきただけか」
「そうなの。だからまだプルプル震えちゃうの。もうちょっと、匿ってね」
嫌味は通じず、さっきよりも眩しい笑顔が向けられた。
男はため息を吐く。
「自分の部屋より、こんなところがいいってのか」
こんな。暗く、ほとんど陽の差さない、灯りさえないという、場所が。
部屋……ではなかった。
「ここがどこだか、分かっているか?」
もちろんよ、と少女は頷く。
「牢獄でしょう」
と――。




