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 ここにいろ、とは言えない。

 少しでも何か――

 外へ、向かうきっかけに。

 逃げ出す決意を見せてくれと。


 ここにいて、気づいてくれ、と願う。

 閉じた世界が、どれ程歪んでいるかを。

 そのためなら、すべてを吐き出したっていいから。


 入り口にさえなれない、どこまでも閉ざされた暗い闇の中。

 それでも、ここだけが外を知る唯一の窓のはずだと。そう信じている。


 救い出そうにも、縛られた両腕では差しのべる掌さえなく。



 頼む、と

 何処にもいるはずのない――神にすがりつきたくなるほど。



 

 こんなはずではなかった、と嘲笑う自分が、ひっそりと立っているのも知っている。












****






「朝は四本、昼は二本、夜は三本。これな~んだ?」

「…………」

「あれ、知らない?」

「……」

「偉い将軍様、知らない? 有名ななぞなぞよ。当てたら次、問題出してね。出し合って当てっこして遊ぶん――」

「……お(ひい)さんよ」


 一段と低い声が、地を這うように言葉を遮った。


「なあに?」

「それは、今、ここで、俺とせにゃならんことか?」


 苦渋に満ちた問いかけに、コロコロと笑い声が返された。


「別に、今、ここで、しなくてもいいのよ」

「だったら……」

「でも私、今、あなたと、遊びたいの。そうすると、出来ることって限られるでしょう? カードもダメ。ボードもダメ。絵合わせはいいけれど、見えづらいし。本は……好みがあるでしょう?」

「部屋に戻れ、今すぐ」


 そんな配慮はいらない、と男は思う。が、駄目よ。と明るく一蹴される。


「今帰ったら、ダンスの時間なの。またお兄様の足をいやってほど踏んじゃうわ。それに私、あの先生はあんまり好きじゃないのよ。国で一番踊りが上手なんですって。だから厳しいのかしらね、すぐつねるのよ」

「……尻尾巻いて逃げてきただけか」

「そうなの。だからまだプルプル震えちゃうの。もうちょっと、匿ってね」


 嫌味は通じず、さっきよりも眩しい笑顔が向けられた。

 男はため息を吐く。


「自分の部屋より、こんなところがいいってのか」


 こんな。暗く、ほとんど陽の差さない、灯りさえないという、場所が。

 部屋……ではなかった。



「ここがどこだか、分かっているか?」



 もちろんよ、と少女は頷く。



「牢獄でしょう」



 と――。









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