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プロローグ
彼は寂れた無人駅の錆びれたベンチに腰かけ、なんでもない外の様子に目を向けている。しかし、その目は虚ろで焦点はどこにあるわけでもない。ただ、目を向けているだけである。そんな彼の目にはなにが写っているのか。見慣れた景色なのか、それとも全くの新しい世界なのだろうか。
時々やって来る写真家たちは彼に話しかけはしないし、彼にはその人も定期的に通りすぎる電車すらも見えていないような、そんな様子である。
もう、どのくらいそうしているのだろうか。1ヶ月なのか、数年間、いや数十年そうしているのか。彼もわかってはいないし、もちろん他の誰が知っているわけもない。
私はそんな一人の老人の姿に強い興味を抱いたのだった。
ネタバレになるので少しタグの数が少ないですが、物語が進むにつれ増えていきます。