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続・原発震災日誌  作者: 山口和朗
57/77

孤独について

続 原発震災日誌57



先日Tとの電話で、私が途中、希望という言葉を言ったらしく、Tはそれをとらえて喜んだ、絶望の考察を3年にわたってやって来ての希望が、その闇の中のかすかな光が見えて来ているのではないかとの、絶望を通して希望に至る姿を期待しての言葉だった、

名実共に絶望になってしまった世界にあって、希望が、愛が、導き出されるなら、それこそが希望であるのだった、絶望の中にあって歌う、カートコバーンのように、絶望を歌うことだけが希望であるようなこの世界にあって、

続 原発震災日誌57



先日Tとの電話で、私が途中、希望という言葉を言ったらしく、Tはそれをとらえて喜んだ、絶望の考察を3年にわたってやって来ての希望が、その闇の中のかすかな光が見えて来ているのではないかとの、絶望を通して希望に至る姿を期待しての言葉だった、

名実共に絶望になってしまった世界にあって、希望が、愛が、導き出されるなら、それこそが希望であるのだった、絶望の中にあって歌う、カートコバーンのように、絶望を歌うことだけが希望であるようなこの世界にあって、

子供が自殺するとは、親が悪い、親に原因があると、親の悲しみを考えると、殺人や自殺は出来ないのに、それをする子とは、親が絶望していないということ、子の絶望は体を張って止めるもの、世界への抗議のような子供の死、親と子の絶望的な隔てが、グルニエの娘も自殺していた、自らへ向かい続ける父のグルニエ、娘にとっては親の喪失、子とは、親の希望、言葉ではなく実在、


孤独について


グルニエが書く孤独は、一般的な、日常的な人間が持つ孤独であり、理解可能であり、人はたえず孤独と連帯を行き来して生きているものとわかる、が、癌で余命宣告を受けた者や、死刑囚と言った者についての孤独は、絶望を伴っており、孤独という存在の延長にはない感情であるのだった、

今私は世界の絶望を考えるとき、この孤独を考えるのだった、この間の私の絶望の考察は無を虚無を、不安恐怖を伴い、孤独を超えた感情であるのだった、余命を、いやこんなに元気だから誤診であるかもしれないとか、いや病気のことなど忘れて楽しもうとか、人はどうせ死ぬのだからとか、様々に考え、人は受容に至るのだが、

世界の絶望など、自分のことではないのだから、最初から絶望はないのだったが、あの日、世界の絶望が、私の絶望へ連結してしまったのだった、私の個人的な絶望体験がこれを引き込んでしまったのか、種としての使命感だったのか、


小1の時の伊深の川でおぼれた体験、小4の時の三ツ池でおぼれた体験、青年の時の遺言棚での滑落予測の体験、そして40歳の癌体験、これらの幾つかの、絶対的孤独、絶望体験は、父の刑務所体験と重なり合い、絶望的孤独が常に通奏しているのだった、父の電気ショックを掛けられた状態、注射を打たれた状態、それらがあの鉄格子の扉を閉める館内に響き渡った音のように、今私の頭に響き渡るのだった、本当は世界の絶望などどうでも良いのではないのか、個人の絶望の前には世界の絶望など生き残る者の問題であって、死ぬものの問題ではないのだった、私の絶望を世界の絶望に重ねて、世界の絶望をことさら煽っているだけではないのか、その為に延々と書いているだけなのではないのかと、どこかで囁く声があるのだった、人の絶望を説く者、ニーチェであっても、超人という希望を背景に、様々語っているだけなのに、私の場合は、何とエゴイストな個人の絶望であるのかと、自己救済の為の絶望の感染を他人に求めてのような、

誰かの自殺をきっかけに、私も狂うかも知れない、痴呆になるかもしれない、孤独と不安の内に死んでいくのかも知れない、多くの自殺者の、癌死した者らの絶望が呪いのように湧き上がるのだった、彼らの呪いを何かによって静めなければと、それは希望であり、愛である他ないのだからと、愛と希望の考察へ向かわねばと、


Oへのレクエム


ごめんね、「G線上のアリア」に書いたように、君とは死ぬまで助け合うと決めていたのに、「これは僕の死だから、入って来ないで」と、私がどこかで人の死を楽しんでいるような、対象にしているような君の見抜きから、私は拒絶されるままに、君の絶望を遠ざけて行った、電話は良く掛けていたが、掛ける言葉は徐々に無くなっていった、そして君は家にいないことが多くなった、パチンコに行っていると、ヒロから聞く度に、私は君への死の尊厳というようなものの、君からの喪失を感じ、君の死は最早君のものだと了解したのだった、いつか君は言った、君の息子たちは大変だと思うと、君のような、独善、一人よがりな父を持っていることの困難を、が、まさにこの私が君の死に対して、そのような姿を表していたのだった、それを君は感知し、私を拒んだのだった、「G線上のアリア」が私と君の絆であるなら、私は私の死や絶望など置いておいて、君の死に寄り添い、君を支え、なごり尽きない、青春の時を、君の過去を共有すべきだったのだ、君が拒んでもそうすべきだった、一人で死んでいった君、アユとヒロはいたのだが、一人の魂であった君を私は知っている、圧倒的時間は苦悶と虚無の表情であった、何かの折、屈託の無い少年のような笑顔を見せることはあったが、幼時の時に死んだという実父のこと、不本意な再婚をした母のこと、精神病の叔母のこと、母方は没落資産家であったこと、再婚した義父の商売が売春であったこと、それを母が手助けしていたこと、そんな中で高校生の時、教師への傷害事件を起こし、そして私の夜間高校へ転校してきた、親戚の砂糖問屋に住み込み通うこととなり、私との付き合いが始まったのだった、君は私の生い立ちを知り、共感を持ち、一緒に住んだり、政治運動をしたり、青春というものの一瞬を共に味わった、が、高三の時に私の父が獄死した、田舎に居る事の理由がなくなった私は、大学受験の為に、義父の居る東京へと、そして、間もなく君も上京し、私との付き合いは再開した、十六才の時より、五十六才で死ぬまでの四十年間、君との付き合いは、何と深く、共有されていたことか、


○ 古田砂糖屋の前、街灯の下に座って、君が持ってきた天津栗を食べながらの自己紹介、

○ 全日制から定時制に転校してきた君は、働らくことは二の次で、よく故郷へ金の無心に帰っていたね、

○ パチンコ、スロット屋へよく行っていたね

○ Yのどこが好きかと聞いたら、目が好きと、

○ 私の思想的なものには遠巻きであったこと、

○ 立命館の受験のこと

○ 東京に来るまでの一年間のこと

○ 私を訪ね、一緒に活動し出したこと、

○ 間もなくK町に部屋を借り、

○ S子を好きになり、新城で新所帯

○ 私が活動をやめると君も辞め

○ 君はインテリアの仕事を始め、私も手伝い

○ インテリアの仕事は長くは続かず、君は故郷へ帰り、

○ 何があったのか、S子と離婚に至り

○ そこで起きた君の自殺未遂、川上村でのレタス仕事

○ 上京し、マルイの宝石屋、

○ そこでヒロと知り合い結婚

○ 東京ネームへ就職、アユ誕生、

○ 肝炎発症

○ 肝癌発症

○ 死

こう書いてきて、何も私は力になっていなかったと思う、やはり君は君であった、君には君だけの悩みが、で、それは一体何だったのか、君の祖父は英語の教師、母の実家は地方の没落資産家、学問への栄達と実業への夢があったのだろうか、私は文学でそれらを果たそうとしていた、


今、私は「絶望と無」と題して、世界の絶望と、私の無を書いているのだが、もし君が生きていたなら、どのような会話が、


未踏で書いてきたことが、3.11以降は色褪せて見える、私は安穏な位置から世界を語っていたのだった、私、私といっても、私は安逸な所からの、が、3.11は、この私の位置へ世界が突入してきたのだった、実存の定義も、生身も、死も、愛も、私で区切っていたものが遊離してしまったのだった、世界の死の淵が私に迫ってきたのだった、

私は信仰を求めないではいられない、キリスト教や仏教にではない、私の信仰、Tに見たような、自然への宇宙存在への畏敬、一体の感情、ドストエフスキーが接吻したロシアの大地へのような、カミユが見つめた地中海の太陽へのような、パスカルが見た星空へのような、どのような人間世界、地球であっても、この時空という存在は永遠であり、一体であるという、石に、草木に、動物に見つける生きんとする力、彼らが在るから、私が在る、彼らが生きようとするから、私は生きようとする、彼らを、石を草木を、友のように、分身のように見つめ、喜び、味わい、神の存在をを信じるかではない、存在という、石や、草木、自然、宇宙という存在を信じる心、それらへ、私を、世界を任せる、自然の思し召すままへの、神の愛、救いではない、存在を許されていることへの喜びに、サルから人間への脳の発達によって意識が発生し現在に至った、人間の、草木とは違った、生きている喜びへの感情、世界が核戦争にあっても、生き延びたものの、存在への感謝、世界を見つめることの、私が私の意識の消滅を見つめ続けることの、去った彼ら、若かった、生きるエネルギーに満ちていた、良い時を共に過ごした、誰もが50代、60代と、若い時の記憶をつないで生きてきた、私の記憶の中の彼ら、皆若い、若かったことの記憶がつながってある、

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