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葉に恋し、山に恋し  作者: 桜騎
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葉に恋し、山に恋し

 「あのね、ハー。またね、おばあちゃんと喧嘩したの。最近そういうの増えてて、何でもかんでもおばあちゃんの言うこと聞きたくないって思うようになってきたの」

「そっか。ま、いいんじゃない?誰もがいつかは体験するでしょ」

私はあの日、ハー(名前はハーとしか教えてもらってない)に出会ってから、頻繁に公園に向かうようになった。ハーは私と同じくらいの歳のはずなのに、いつも公園にいる。学校はどうしてるのかな?

「…ハーは、そういうことって無いの?」

「…多分、僕もあったと思う。どうだったかな、忘れちゃった」

「忘れるって…」

ハーに過去の事などを訊くと、ほとんど「忘れた」でわからない。

「だってハー、私と同じくらいの歳でしょ?忘れた…て、ねえ…。私よりう~んと年上なの?見た感じ、私より年下って感じだけど…。ハーって、ほんと何歳なの?」

「う~んとね、君よりは年上かなあ?実は結構歳離れてると思うよ?」

「うっそだあ。私より背低いし、童顔だし、ンなわけないじゃん」

ハーはニコニコしていて、嘘かホントかわからない。本当に、ハーって不思議…。

 そのとき、私は良いことを思いついた。

「ふ…ふーんだ。ハーってば、歳ごまかすなんてサイテー!もう知らない!」

私はそっぽを、むいてスネたふり。これならきっと、本当の歳を教えてくれるはず!

「あはは、しょうがないなあ…」

私はそばまで来たハーを見るため振り返る。

「君が、そこまで知りたいのなら、教えてあげる。僕はね、--------」

「…っ!!」

振り返った時にはハーはもういなかった。

 「…ただいま…」

「おかえり」

おばあちゃんはまだツンとしていた。

「…さっきはごめんなさい」

今日は私が素直に謝ったため、おばあちゃんは機嫌を取り戻した。

「わかればいいさ。ごめんね、おばあちゃんもちょっと強気ででちゃったね。さあ、晩御飯にしようか」

「うん…」

私が元気がなく口数も少なかったため本気で反省していると思ったのか、今日は私の好物の「焼いたウィンナーに焼き肉のたれ」をかけたものを出してくれた。美味しかったが、今はそれどころではなかった。

『君が、そこまで知りたいのなら、教えてあげる。僕はね、--------』

「私が小さいころにはもう10歳をすぎていた、か…」

ハーは私の歳を知っているのかな?

「え?」

あ、しまった。今ご飯中だった。

「いや…あのさ、私が小さいころに10歳過ぎた人っていた?公園で」

「さあねえ。そんな子いなかった気がするけど。まあ、あるとすれば木くらいかな?」

「木…?…!!有り難う、おばあちゃん!私、ちょっと行って来る!」

「あ、こら色葉!まだ食事ちゅ…」

「それはあとでね!後でならいくらでも怒ってくれていいから!」

「はあ…?」

 私は公園へ向かって走り出した。

「ハー、待ってて、今行くから!」


 「ハー!」

「色葉ちゃん!どうしたの?」

やっぱり、いた。

「ねえ、ハーってさ、この木なんでしょ?」

「!!…なんの事?」

「ごまかしても無駄だよ!…木、なんでしょ?」

「…」

ハーは1本の木から1枚の葉を取った。

「そうだよ、僕は木だ。お気に入りのこの葉の年齢を借りて、今ここにいる」

「そんな!じゃあ、それはとっちゃ…」

「そうだね。もとに戻ってしまう」

ハーは気付いたら…というか、瞬き1つした時には大きくなったハーになっていた。

「やっぱり」

ハーは照れ臭そうに笑った。

「久しぶり、色葉」

ハーには、過去に何回か会った事があった。小さい私がここに座っているとき、ハーが歩いてきてよくここでおしゃべりをしていた。

「てかさ、早く水をあげないわけ?」

私は、再会(?)の喜びよりも先に言った。大事なことを。

「…」

「あの時、私と話していたのは雨が何日もふらない時だった。ハーは手に水を持って、木に水をかけながら話した。あんたさ、私が来た時のためにって水を取りに行ってないんじゃないの?」

最近、雨は全く降らなかった。私は満足して帰れても、ハーがつらいんじゃ嬉しくない。

 「早く、水を…」

ハーは笑いながら言った。「もう、いいよ」と。

きっと、私の瞳は大きく揺れた。つまり、ハーは…。もう、ハーは…。

「色葉は最期まで優しいね」

「あ…たり前でしょ?だって、小さい小さいあのころの私の初恋の相手だったんだから!」

ハーは笑った。

「僕は君の全てを知っているつもりだったけど、それは初耳だなあ…」

「そりゃそうでしょ。だって、今の今までそんなこと忘れてたもの」

「へ~。忘れてたんだ!」

小さいころの事なんて、忘れているにきまってるでしょ。

 「ちょっ!ハー!」

気付いた時にはハーの顔は青白く、ふらふらとしていた。

「いいから!…いいから、今のうちに言いたいことは?」

「…言いたいこと、は…」

そんなの、きまっている!

「ハーの…バカあああぁぁ!」

ハーはふっと笑った。

「別れ際にそれって、やっぱ色葉って面白い」

「それと、今まで私の愚痴りや相談聞いてくれて、ありがと」

今度こそ、ハーはにっこりと笑った。

「…うん」

ハーはスッと目を閉じた。それからは、アニメお決まりの輝いて消えるパターン。私は、静かに見送った。


 その日から、私は見つけ、出会う葉に恋し、愛し。山も、大事にした。それが、ハーの生まれ変わりであっていいように。

 こんにちは、桜騎です!この話で完結しました!ここまで読んでくださった方、有り難う御座いました!

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