気付いたら、始まっていて・・・
私はあの日、山が好きになった。
あの日、私はおばあちゃんと喧嘩した。いつもは私が我慢しているからそこまでならなかったけど、我慢しすぎてもう無理だった。だから、私もついつい言い返した。だけど、私は13歳。こういう事の経験は、おばあちゃんの勝ちに終わる。勢いが余って家を出た。思いっきり走って、走って、走って。気が付いたら、小さいころからの思い出が沢山ある公園に来ていた。ここには少し小さいけど山があって、深い所は少しだけ複雑になっている。私はここなら一定の場所から動かなくてもすぐには見つからないと思い、夜で薄暗い山に入っていった。
少し暗くても、私は大丈夫。ちゃんと歩ける。私はどんどん奥へと進んで行った。一番お気に入りの場所について、空を見上げながら座った。その日は、星がきれいだった。…しばらく空を眺めていたら、足音が聞こえた。ここまで来るのにかなり急な坂道や放置されてぼうぼうの草と木の根っこが飛び出ていたから、まさかここまで追って来れるはずがないと思っていた。だって、おばあちゃんだ。私と47歳も違うのだ。私だってきついのに、ここまで来れるはずがない。そう思い、振り返れば、知らない男の子が立っていた。男の子は、「こんばんは」と言って隣に座ってきた。これが、私の何もかもの始まりだった。
「あんた、よくここまで来れたね。大変じゃなかった?」
「まさか。この山は皆優しいからね、皆僕を案内したりしてくれたよ」
「ふ~ん…」
山が案内とかはよくわからないいけど、この山が優しいことがわからないことはなかったから、うなずいとくことにした。
「それより、君はこんな時間にここでどうしたの?」
今日がはじめましてなのに、よく聞いてくると思った。が、黙っとくのも嫌だったから、答えた。
「おばあちゃんと喧嘩。きっと今回も、私が謝ることになるんだよ」
「…なんで?ていうか、何でおばあさん?」
「…お父さんもお母さんも、私の妹にがんばってんだ。もうすぐ産まれる。それまで私はおばあちゃん家に泊まれってさ。…今回も私が素直に言うことを聞かなかったから怒られたんだよ。きっと、たぶん、また私が謝るんだよ」
そう、私がお世話になっているから、何でも言うことを聞くのは当たり前。たとえ、家の掃除をしてから学校行けと言われても、遅刻するからとすごく早起きして掃除してうるさいと言われても、やるのが当たり前。たとえ、ぶたれても…。
「家に、帰りたくないなあ…」
「…そういえば、名前聞いてないね」
…今更かよ。この空気壊してんじゃねえよ!言いたかったけど、確かに教えてないのもそうだから、教えることにした。
「私は長月色葉。あんたは?」
「えーっとね、特にないかな…」
「…は?」
こういう感じの恋愛漫画だと、実は同じ学校でした的なパターンじゃん。それはごめんだ!私の初恋を、こんなのほほんとした奴にあげられるか!
「じゃあね、ハーとでも呼んで!」
「…ハー…?」
あまりのネーミングセンスの無さに、私は愕然とした。
「そ、ハー。んじゃ、これからよろしくね!」
…これは、私があることに気付く前の、始まりの話。
こんにちは!桜騎です!今回は、ローファンタジーと恋愛の話です!反抗期の女の子と、優しい山の男の子は初めてです。ドキドキします…。完結まで見守ってくださるとありがたいです。それでは、また次回で!