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ミドリ編 第10話
「おーい、ミドリくーん」
誰かが呼ぶ声が聞こえる。
気づいたときにはミドリは森の中にいた。
雨が降っていた。
ぽつぽつと木々の間をすり抜け、雨粒はミドリの頬を濡らした。
「誰かいるの?」
ミドリは声の方へ駆け寄った。しかし、そこには誰もいなかった。だが、
「ここにいるよ」
確かに声は聞こえていた。なんで、どうして、この声は聞こえるんだろう。ミドリは頭を抱えその場にうずくまった。
「ほら、ここだよ、ここ」
ミドリは顔を上げる。しかし、やはりそこには誰もいない。
「君のすぐとなり。見えないの?」
ミドリは横を向く。そこでやっとミドリは
目を覚ました。
僕はあの声を覚えている。ミドリはそう自分に話しかけた。どうして今さらあんな夢を。もう忘れかけていたのに。忘れかけていたのに。ミドリは自分に嘘をついたことに気がついた。忘れてないんだ。本当は。あの雨の日から、僕の中の物語は時が止まってるんだ。夢の中の声、それは確かにあの子だったのに、
その時、隣にいたのは、一匹の猫だった。