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観点の先に

…私が思うに。

よく世間一般で「いい話」とか

言われるのは、人生には無駄がないとか

努力すれば伸びるとか、色々あって後悔して

また繰り返さないように生きてるとか

なにかしら平等でそっけなくて

それでも誰もが自分をついつい当てはめてしまって、

勝手に主人公になりきって、勝手に落ち込んで

それでも自分は前を向いている、自信を持て。

って流れで明るい希望が

軽く持ててしまう話のことを言うんだと。

「…では、えー次の問題を黒潮…」

別に悪いことだとは思わない。思えない。

だが、なにかそれでは、私には自由がない

気がするのだ。

…自分の限界を知った後で諦める自由が。

それでもなお、足掻くのは寂しくて、見苦しくて、

悲しいものではないのかと。

「…ねぇクロミちゃん、当てられてるよ。」

では突然話題を変えて、クイズを出そう。

この私、黒潮 湊はどれぐらい人生を

歩んできただろうか?

A.なんか色々話し方が厨二くさいから

流れで中二

B.もう一回り成長してそうだから高二

C.実はこの世界ではなく異世界からの旅人で

実年齢は200歳


そろそろ答えてもらうか。

正解は…C!だったらちょっと楽しそうだったんだが

残念ながら高一だ。

あれ?選択肢にないって?

知るか。

選択肢の中にある答えしか選べないなんて

退屈だろう?

ふと窓を見れば美しい景色が

広がっていて、そんなどうでもいいこと全て

捨て去って空でも飛んでみたいなんて…

「おい黒潮、聞いているのか!」

しまった。

考え事が過ぎてしまったようだ。

高校の数学など、どこで使うのだろうか。

漢字の読み書きと地理や基本的な

計算、相手の顔色の伺い方さえ

わかっていれば、この日本という国では

生きていけるのではないだろうか。

あっ、最大の問題はやる気だな。

私には無い。

「全く…少しは真面目に勉強しろ!」

この学校と言う閉鎖空間の中

絶対の存在が、この教師という奴だ。

この教師の教え方や生徒と呼ばれる

私達への接し方でだいぶ私達の

成長の方向が変わると思うのに。

もっと丁重に扱ってほしいものだ。

1日の大半はここで過ごすのだからな。

と思っていたらそろそろ授業が

終わりそうだ。

本当に適当な事ばかり考えていても

時間の流れはあっと言う間だな。

「起立、礼…」

しかし私は学校にも悪いところ

ばかりではないと思う。

私は昔から朗読をする事が好きなのだ。

初めて見た文を詰まることなく

スラスラと読めたら中々の快感だからだ。

そして渾身のドヤ顔をキメる。

すこし冷たい視線を受けるのは

いつものことだ、大したことない。

「クロミちゃんは本当、

いつも何考えてんのかわかんないね。」

当たり前だ、何考えてんのか

わかってしまったら心理カウンセラーなぞ

要らんわ。

「自分でも何を考えているのか

わからない。」

それが本音。

もう一度空を見上げる。

飛行機雲が綺麗だ。

明日は雨だろうか。



今日は外が暗い。

こんな日は気分が沈んでしまう。

なにか楽しいことを考えよう。

…楽しいことってなんだろう。

疑問が浮かぶ。

最近楽しいことってあったかな…。

今は国語の時間だ。

前にお話ししたが私は朗読が好きだ。

でも古典は苦手だ。

結構いいこと書いてあるけどな。


未来に生かす為に過去を学ぶ必要がある

ってどこかで聞いた事がある。

でも過去を学んだところで

学習し、未来に生かせる人間に

なれるかどうかなんて人それぞれだと思う。

誰もが誰もロボットのように頭が

切れるなら間違いなんてそもそも起きない。

でも今を生きることに精一杯、

どんなに頑張ろうと先が見えない私が

努力し、学ぶ意味などあるのだろうか。

…あぁ何故こんなにも暗い事を

考えているのだろうか。

きっと天気のせいだ。

そうに違いない。

そうだと思いたい。

そうだそうだそうだ。

そんなことばかり考えていると

先生から朗読に指名された。

私の曇天の心に光が射すようだ。

天にいるらしい神という

都合のいい時だけ人間に頼られる存在に

不覚にも助けられてしまったようだった。


いいんだ、もう直ぐ授業が終わるから。

授業が終わって、学校が終わって

1日が終わる事なんてあっと言う間だ。

私は、1日寝たら忘れちゃうから…

…………………………。

1日寝たら忘れる感情って…

私はどれだけ意味のない毎日を過ごして

いるのだろうか。

何もしないのに壊れそうだ。

今日も疲れた。

頭を使いたくない。

寝よう。

忘れよう。




おはよう、今日の私。

きっとまた余計な事を考えて

成績を落とす毎日を繰り返す私。

いつかの漫画で見た、

いじめっ子からいじめられっ子を

守ってあげる、主人公のような

ヒーローのような、

そんな人になりたかった私。

でもそんな学校と言う閉鎖空間では

沢山の理不尽なカーストがあって、

そんな中でも何時だって自分の

立場を自分で守れて、厄介な人には

無理に干渉しなくて済んで、そして

心の中でいつかなれるように願った

誰かのヒーローになりたい時にだけなる。

相手側からしたらお節介や邪魔に

感じられても自己満足が達成されればいい。

なんて自分勝手な

変人「キャラ」を演じていくんだろう。

でも

そんな日もいつか終わりを告げ、

変わらなければいけない日も来るだろう。

知ってるよ。

自分の心は騙せないから。

誰にも私を見て欲しくなくて、

誰かに私を見て欲しい。

もしかしたら、

私は愛が欲しかったのかもしれない。


どちらかもわからない日々は

今日も続いてるけど、心でも

変わって欲しいとも変わって欲しくないとも

思っている。

そんな自分が嫌いだ。

でも、現実は非情だからまた明日が来て

忘れて、忘れて、忘れて、

今日のこの感情は遠くへ流れても

余計なことを考えて生きた時間は帰らない。

だから、さようなら。

今までの今日までの私。

本当に本当にお疲れ様でした。

今までを生きて、ここまで頑張ってくれて

ありがとう。ありがとう。

次に会えるならば−…



















「ふーん、これがこいつの心の遺書か。

…つまらないな。」


「いやー、人格改変プログラムの

第一被験体がこんなにも早く決まるなんて、

自分、びっくりッスよ。」


「まぁ、さっさと始めちまおーぜ。

俺らには



関係ない事だしな。」


「実験さえ成功すれば

用無しッスもんね。


…バイバイ、黒潮 湊サン。」


ガチャ…ン ウィィィィ…ン


























今までを生きて、ここまで頑張ってくれて

ありがとう。ありがとう。

次に会えるならば、

もし、会ってしまいそうになったら



どうかそれまで

心からの笑顔で笑える

日々を送ってね。

私の代わりに。





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