先輩、柔軟の相手、お願いします
体育館の片隅に置いた卓球台の前で、ぼくと美島さんは準備体操をはじめた。
体育館中の他の部の部員たちが、チラチラとこちらを盗み見ている。
その視線には、「うらやましい」という気持ちがこもっているのがバレバレだ。
ぼっち卓球部とバカにされつづけていたぼくが、まさかバスケ部やバレー部の羨望の視線を集めることになるとは!
そもそも、ぼくらの学校には、女子生徒が少ない。
べつに男子校というわけではないのだが、同じ地域に女子校があって、伝統的にそっちに行く女子が多いのだ。
だから、バスケ部もバレー部も、女子部員はいない。
だから、放課後の体育館は、まるで男子校のように男ばかりだ。
その中で、美島陽毬は、紅一点の女子だった。
「先輩、柔軟体操の相手、お願いします」
美島さんが、少し恥ずかしそうに言ってきた。
「あ…りょ、了解」
ぼくは、脚を伸ばした美島陽毬の背中を押した。
ショートパンツから伸びる白い脚が目にチラついて、目のやり場に困る。
彼女の身体は驚くほど柔らかかった。
ぺたりと、上半身が床についてしまった。
ついで、彼女は両足を思い切り広げた。
その状態で、やはりお腹が床につくほど身体を倒す。
彼女のピンクのポロシャツの裾から、ほんの一瞬、わき腹の白い肌が見えた。
バスケ部やバレー部の連中の視線を背中に感じた…
殺気かもしれなかった…