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先輩、これはいったい?
「すいません、先輩。用具倉庫は卓球部が使用中です」
ぼくがそう言うと、赤石先輩はちょっと驚いた顔をした。
まさかこのぼくが、自分に口答えするとは思わなかったのだろう。
しかし一瞬後、がしりと、先輩の巨大な手がぼくの肩に乗せられた。
「用具倉庫は、体育館で練習する運動部すべての共有スペースだ。卓球部だけが独占することは許されん!」
赤石先輩はそう言うと、巨大な手にほんの少し力を入れた。
それだけで、ぼくの身体はかんたんに扉の前から動いてしまった。
「待ってください!」
ぼくはそう叫んだものの、すでに赤石先輩の手は用具倉庫の扉にかかっていた。
万事休すだ…
そう思った瞬間、
用具倉庫の扉が開いて、
中から、
薄いピンクのポロシャツと白いショートパンツを着て、ペンホルダーの卓球ラケットを持った女の子が出てきた。
美島陽毬だ。
「ん?」
赤石先輩が、自分のヘソくらいまでしかない美島を見て、怪訝な顔をした。
美島さんは、いきなり大勢の男子にとりかこまれた状況に、かなり驚いているようだ。
「え〜と…先輩、これはいったい?」