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先輩、どこで着替えればいいんですか?
「先輩、ユニフォームには、どこで着替えればいいんですか?」
体育館の隅に卓球台を動かしたところで、彼女がいった。
彼女…美島陽毬が卓球部に入部して、まだ初日だ。
ぼくたちは、制服を着たまま、台の準備をしていた。
「ああ、うん…それはね…」
卓球部に、部室はない。
これまで、部員はぼく一人だったのだ。
ぼっちの部に、部室などという贅沢が、許されるはずもない。
この事実を知ったら、彼女はどう思うだろうか?
ぼくは、彼女を体育館の用具倉庫に連れていった。
「じつは…いつもここで着替えてるんだ…」
「はぁ…ここで、ですか?」
「うん、卓球部には、部室ないから…」
部室のない部なんて、やめます!
いつ美島さんがそういいだすかと思い、ぼくはビクビクしながら、そう告げた。
しかし彼女は、とくに気にする様子もなく、
「わかりました。じゃあ、わたし、こっち側で着替えますね」
そういって、カバンを持って、高く積み上げられている跳び箱の向こう側にいった。
どうやら、そこで着替えはじめたらしい…。