わかりました、先輩
「え〜と…。卓球台はここにあるから、いつも部活をはじめるときは、これを出して、あそこに運ぶんだ」
体育館の用具倉庫で、ぼくは、美島陽毬と二人きりになっていた。
「たった一人の卓球部なんて、もうやめてやる!」
そう決意して、顧問の中村先生の部屋に行ったら、そこにペンホルダー型のラケットを持った、ポニーテールの女の子がいた。
それが、美島陽毬だった。
彼女は一学年下の一年に、今週転校してきたばかりだった。
その彼女が、卓球部への入部を希望したのだ。
ぼくと、美島陽毬との、二人ぼっちの卓球部が、突然はじまったのだ。
「わかりました、先輩。それって、一年の仕事ですよね?」
先輩…
たった一人で部活を続けていたぼくには、こんな一言でも、心に響いてしまう。
「あの…そうなんだけど…でも、いまは二人しかいないから、一緒に台の準備をしようよ」
「はい!」
ぼくと彼女は、二人で卓球台を運ぶと、体育館の隅に設置した。
昨日まで、たった一人で運んでいた台を、二人で運ぶ。
それだけで、こんなにも部活が楽しくなるなんて。
バスケ部やバレー部の連中が、ジロジロとこちらを見ていた。
卓球部に、いきなり部員が増えているのが、驚きらしい。
そりゃ、そうだ。ぼくだって驚いているんだから…。
二人で台を運びおえると、彼女がいった。
「ところで先輩、ユニフォームには、どこで着替えればいいんですか?」