表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

風呂敷は畳めない

作者: めらめら

「うう……だめだ、やっぱり気になる!」

 蒸し暑い梅雨曇の朝のこと。通学の途の中学二年生、如月せつなは、今朝も『それ』のことで頭が一杯だった。

 ターミナルに至る運河通りの欄干の際、小石の重しで留め置かれた茶封筒のことだ。

 いったい何時の頃からだろう? せつなが気付いた時には、雨の日も、風の日も、雨にも風にもついに朽ちることなく、その封筒はあった。

 他の歩行者もそれを気にしているのは明白だった。封筒の前、橋の中程で、道行く人々の足は自然と鈍るのだ。それでも何かが躊躇われるのだろうか? 小石を取って封筒の中を見ようとする者は、まだ誰もいない。


 だが、その日、ついに!


「えーい何を迷う!こーゆーのは、やったもん勝ちじゃー!」

 とうとう我慢袋のはじけたせつな。彼は欄干の際に駆け寄ると、封筒に手を伸ばした。

 ぴたり。


 歩行者達の歩みが一斉に止まる。皆が息を飲み彼を見守る中、


「うわー!」

 小石を退かそうとしたせつなが、大きくのけぞって、道に尻もちをついた。

 小石は、せつなの力では、ビクともしなかったのだ。


 ざわ……ざわ……ざわ……


 群衆の間に動揺が広がって行った。


  #


 以来五十年間、世界中から何万人もの力自慢がこの橋に集い、封筒を押さえた小石を持ち上げようと死力を尽くした。

 神の代行者を自認するその何倍もの電波受信者達が、己が奇跡で石を浮かそうとした。

 当代一の科学者たちは欄干で顔突き合わせて、石の周りに生じた不思議な『力場』に関する自説をぶつけ合った。


 それでも石は、誰にも動かすことはできず、恐れをなした人々は石の周りに祠を建てると、人知の及ばない神秘の標として、丁重に崇め、祀った。


  #


 そして五十と一年目、ついに、秘石を動かす者が現われた。

 通学途中に祠を覗いて、何の気なしに秘石を拾い上げたのは、齢十四の中学生。

『原初の挑戦者』にして『混世の運び手』たる如月せつなの孫娘。『選ばれし巫女』、如月かなただった。

 やがてかなたの前に現れる彼女と同じ『因子』を持った七人の少年少女。

 ついに封印を解かれた茶封筒の中の便箋。そこに記された人類創生にまつわる驚くべき事実が、彼女を、全世界を巻きこんだ大冒険に駆り立てる!


 けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときにはなすことにしよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はやく、語って(✽ ゜д゜ ✽)
2019/02/06 18:09 退会済み
管理
[気になる点] ひでぇw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ