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「・・・あれ、手紙来てるじゃん」
小さな喫茶店を経営している彼は、裏口にあるポストに無造作に突っ込まれた手紙を見つけた。
「母さんからか」
小さく息を吐きながら、不当をがさがさと開く。細い、しかししっかりとした腕には、一輪のバラをモチーフにしたタトューが刻まれていた。
「・・・へー。養子、か」
彼は呟き、青空を見上げる。耳に着けた二つのピアスが、小さく揺れる。
「久しぶりに、遊びに行ってみようかな」
手紙をたたみ、店の奥にある自室へ行って引出にそれをしまう。棚の上に置かれた、茶色い額縁の小さな写真を見て笑みを漏らす。しかしすぐに暗い表情になり、窓の外の小汚い路地を見つめた。
「・・・魔法って、なんのためにあるんだろうね」