♢2♢
今回も少しだけ暗めです。♢1♢よりはまだ全然ましかとは思いますが・・・。
その日は秋晴れのすがすがしい空が続いていたのに、彼女の心には楽しい気持ちなどこれっぽっちも無かった。
「駄目、無理なものはむり!!うちにあなたのような力を持つ子を迎えたくない!」
「なんで・・・なんでですか、血筋ですか!?私は絶対、ここの人たちに迷惑をかけないって約束しますから」
「あなたが力を使うかは関係ない。あなたみたいなのは何をやるか、怖くて怖くて一緒に暮らしてなどいられますか!!」
目の前で言い争っているのは、彼女の母親と、今日うちに養子として来た少女だった。少女はとても礼儀が正しく、彼女はすぐに打ち解けた。しかし、両親は違う。
少女を追い出すことしか、考えていない。理由は、わからない。だけど、
少女の血筋に問題があることだけはわかった。
「大体、あなたの母親も母親よ。どうして血筋のこと黙って契約なんか・・・!!」
「いやお前、とりあえず落ち着け」
母親に声をかけたのは、彼女の父親だ。彼は冷静で、しかし一度やると決めたことは必ずやる人間だ。おそらく、少女はもう――。
「たしかに君は悪くない。だが君と暮らすことで迷惑にもなるこっちのこともわかってほしい」
―なんなの父さんも母さんも・・・そんなの、酷すぎる
「いいか、私の妻の使用魔類は“消去”だ。もちろん存在を消すことはできないが、この家から消すことはできる。言ってることが、わかるな?」
「そんな・・・そんな」
少女の目には、大粒の涙が溜まっていた。
「ちょっと二人とも、酷すぎない!?この子は何もしないって言ってるじゃん・・・」
思わず口を挟んだ彼女の言葉を遮るように、異変が起こった。
「・・・あ」
少女が、弱々しい声をあげる。はっとして見ると、少女の体が光に包まれていた。
光は粒子となり、上へ上へと上がっていく。それと一緒に、少女の体も消えていくようだった。
「嫌だ・・・嫌です。お願いです、どうか・・・。帰っても、私なんて・・・。お願いです、どうかっ」
涙で頬を濡らして、すがる藁も消えた子猫のように泣きじゃくる少女。彼女は手を伸ばすこともできず、それを呆然と見ていることしかできなかった。
―こんなのって・・・ひどすぎる
「まあ、あの子が元の家で暮らせるかどうかも怪しいけれどね」
「・・・え?」
母親が、疲れたように髪をかき上げる。
「あの子、向こうの家でも相当扱い酷かったらしいわよ。なんでも、長女のくせにその自覚がないとか、頼りにもならないとか。一応広い面積を誇る地主の家らしいからそれなりにいろいろあるんじゃない、長女だと」
「そんな・・・」
それで追い出された養子先でもさんざん言われてまた追い出される。そして家に戻っても、ひどい扱いをうけ、もしかしたら家にすら―――
「?何やってるの」
後ろから聞こえる声も気にせず、彼女は愛用している肩下げ鞄にお金と薄いタオルケット、着替えを一枚ずつ押し込むと、靴をはいて外に飛び出した。
「!どこ行くの!」
そんな母親の叫び声に、答える気は無かった。走りながら、彼女は呟く。
「いつからこの世界は魔法をこんなふうに使うようになっちゃったの・・・?」