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Bloody Christmas  作者: キー
第一部:オオカミ退治
5/8

05



つなぎなので、割と短め。

 それから三日、何事もないまま時間だけが過ぎていった。

 何も無いというのも、それはそれで不気味だったが、僕はこのつかの間の平和を楽しんだ。

 夜限定だったが。

そして今日はクリスマス、十二月二十五日だ。

 僕らはこの三日間、昼間寝て夜起きるという完全な昼夜逆転の生活を送っていた。しかし、三日間の間にどこからかクリスマスの情報を仕入れてきたアネットのテンションは高かった。

 日本と諸外国とでは、クリスマスの様式も違う。日本のクリスマス、つまりは恋人達のクリスマスを正式なものだと思ってしまったアネットは、間違った方向にまっしぐらだった。

 どこからか持ってきた女性雑誌の、行きたいデートスポットのページを開いて机の上に置いておく。

そんなのはまだ良い方で、僕はこの三日間、平和なのに平和ではなかった。

 今日も、アネットは午前中から起きていた。そのテンションにつきあわされた僕の苦労をわかってくれるだろうか。

 ……というか、眠いですアネットさん。

「ハルカ! 日が沈んだよ、さあ行こう! ほら早く!」

 カーテンを薄くめくって外を確認したアネットが僕の手を掴む。なにか文句を言う暇もなく、僕はホテルの外まで引っ張られていった。

 街はイルミネーションで照らされ、その下を人々が行き交う。誰も彼もが、クリスマスというイベントを楽しんでいるようだった。

 そして、誰よりもクリスマスを楽しもうとする女性は、残念な事に、僕と腕を組んで、僕を逃がさないようにしていた。

 まず、ビルの最上階にあるレストランに連れて行かれ、料理に舌鼓を打った。……勿論、費用は僕持ちで。

 ウェイターのお兄さんが帰り際に「がんばれよ」とばかりに親指を立てていたのがやけに印象に残った。

 次に、クリスマス営業だとかで夜まであいているブティックに連れて行かれた。

 そこでワンマンファッションショーを繰り広げた挙げ句、(彼女が)最も気に入った服を(僕が)買った。

 アネットはスタイルが良いから、どんな服でもよく似合った。……勿論、本人には言わなかったが、しっかり見抜かれていたようで、僕が一番いいと思った上下をレジに持って行っていた。

 ……女性の服って、なんでこんなに高いのだろうか。

 ここでは、着替えている間、手持ち無沙汰でフィッティングルームの前で立ちつくす僕を、店員さん達が微笑ましいものを見るような目で見ていたのが印象的だった。レジのお姉さんは「がんばりなさいね」と励ましてくれたし。

 次に、アネット念願のゲームセンターに行った。

 このころになると、僕も諦めてアネットと一緒に楽しんだ。

 まさかこの年になってレーシングゲームをやる羽目になるとは思わなかった。

 最後に、今日の記念にという事で僕はプリクラを提案した。

 珍しがる彼女の手を引いて、二枚写真を撮る。

 しっかりと枠まで選んで、現像されるのを二人で待つ。ところが、現像されたプリクラのシートには選んだ枠しか印刷されてなかった。

 吸血鬼は鏡に映らない。だからなのか、写真にも写らなかったようだ。

 僕がそんな推論を言い、二人で枠だけのシートを持って爆笑した。不思議と、損をしたという風には思えなかった。


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