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死神運送  作者: 御伽屋
1/3

終わりと始まり ①

空が高い。いつもいつも見上げていた空。雲一つなくて、風が穏やかに吹いていてただ前だけを見て走っていたあの頃をふいに思い出す。カーテンの隙間からは昨日の雨が嘘だったように、強い日差しが目に痛い。頭に響く目覚ましに目をやると8時を回っていた。高校まで最低でも20分は掛かる。

「やべ・・遅刻」

窓を開けると涼しい風が髪を撫でた。眠たい目をこすって仕度をし、制服を着て、6畳で一人暮らしの部屋を出た。

学校に行く途中、ネクタイをしっかり締めて、欠伸を一つ、黒ぶち眼鏡をかければ、絵に描いたような優等生姿だ。俺の学校は、県内でも有数の進学校・・ではなくて下から数えた方が早いくらいの学校。そんなんだからあまりいい噂がない。

本当にいい天気だ。学校までの道のりは、比較的平らで途中に一つ大きな上り坂があるだけだ。朝は多くの人がランニングをしている。昔は自分もあの中の一人だった・・もう関係ないけど。走る人を横目に学校までの道のりを急いだ。案の定、校門の近くに着いた頃には多数の生徒が走りこんでいる姿が見えた。

「おら、お前ら急げ。閉めるぞ」

教師がせきたてると、自分の周りで歩いていた生徒も走り出した。その時、背中に思い切りぶつかって通り過ぎる集団がいた。その中の一人が微かに降り向いて笑ったのを俺は見た。俺は走る気にはなれず、眼の前で門が閉まるのを見送った。ギリギリ間に合って校門を抜けた集団は、まだ玄関に行かずにいた。俺は、校門前で教師に止められていた。

蕪螺(かぶら)()、お前が遅刻なんて珍しいな。けど、お前何故走らないんだ?走れば間に合っていただろ」

「・・・すいません」

一通り教師の説教を聞いた後、教室に行くように促された。

「よぉ、おはよう。蕪螺木君。君が遅刻だなんて信じられないなー」

あの集団が囲むように喋りかけてきた。俺はそのまま歩き続けた。

「あれ?ご機嫌斜め?天下の蕪螺木悠人がさ」

校門の前でぶつかって笑っていた奴が、冷たい笑顔を向けてきた。

「何だよ?それ」

集団の一人がわざとらしく聞いた。

「おいおい、知らないのか?蕪螺木悠人って言えば、中学の頃陸上部のエースで全中2回優勝してるんだぜ?周りには、ファンクラブまである将来有望視されたスターだったわけよ」

俺は黙って歩き続けた。その集団は相変わらず真ん中の小さな男をとり囲んだまま話続けている。チャイムが鳴り終わり、授業が始まっているのか廊下には誰もいない。教室内のざわめきが少し廊下に漏れている程度だ。その中で集団の話し声だけが異様に響いた。

「それで、3年の全中目前にして蕪螺木君は事故に遭ってしまいました。もちろん、大会は欠場。陸上部から姿を消したと・・・んで、その後は一気に一人だよな?周りから友達は遠のき、陸上推薦も取り消し、そんでこんな学校に。あぁ、蕪螺木君かわいそう」

「僕たちがお友達になってあげようか?」

一人の男を取り囲んだ男達は、嘲るように笑っている。俺は、ずっと黙ったまま囲まれた輪を強引に抜けると後ろから最後のとどめが来た。

「蕪螺木くーん。お父さんとお母さんに助け求めたら?」

「おっと!両方死んじゃったんだっけ」

集団が廊下いっぱいに笑い声を上げた。俺は、思わず振り返ったが、言葉が喉につっかえている感じがしてそれ以上何も言わずにただ拳を握って教室のドアを思い切り開けた。教室中の生徒が一度、ドアの方を見たが、またすぐ元あった場所に視線が戻った。いつもの事だ。『暗い』『ダサい』『キモい』俺の三大ワードらしい。つまり俺は、ここでは価値を持たない、と言うことだ。はっきり言って学校に何しに来てるかわからない。中学から勉強なんてしてなかったし、今更頑張っても仕方ない。そんなわけで、家と学校の往復をただ繰り返す毎日。あっ、たまに靴が無くなってたりするけど。

俺の席は窓側の一番後ろだ。窓越しに見える空には、小さな薄い雲が漂っている。

「暇だな・・」

5限終了を知らせるチャイムが鳴った。一気にざわめきを取り戻した教室を出て屋上にのびる階段を昇った。本来立ち入り禁止の屋上だったが、鍵の部分が大分前から老朽化しており、簡単に出入り出来る。最近の俺の居場所だった。ドアを開くと涼しい風と一面の空が広がった。何かから開放されたかのように溜息を一つ吐くと、黒ぶちのめがねを外し、ネクタイを緩めた。そのまま頭の後ろで手を組み寝そべった。床のコンクリートの感触が背中に伝わってくる。しばらく穏やかな空を眺めているうちに眠ってしまったのだろう。うすく瞼を開けるとやはりそこには空だった。

「高いな」

ふいに横を見ると、見知らぬ男が寝ていた。

「うわっ」

俺は驚きのあまり声が上ずって、起き上がった拍子に足がもつれて後ろにひっくり返った。俺の声で目を覚ました男は、眠たそうな目で、無理矢理起こされて不愉快そうに欠伸をした。もう一つ俺は驚かされた。実は、ジマンじゃないが俺は身長は165cmしかないが、顔だけは良いと思っていた。中学の頃、彼女は作らなかったが、告白なら何回もされた。その時の俺は他の事に夢中だったのだ。て、そんな事じゃなくて、その男はまさに甘いマスクという言葉がピッタリの男だ。細身で長身。バランスの良い顔。程よく焼けた肌、色気さえも漂い、髪は全体的に長く、得に襟足が長い。いわゆるロン毛だ。俺は、ロン毛なんてカッコつける奴がするもんで、似合いもしない奴がやつのは嫌いだ。しかし、寸分の狂いもなくその髪型さえもその男に似合っているのだから逆に目が惹きつけられる。

「何?お前」

その男が胡坐に座り直し俺を見た。声もよく通る声だ。

「べ・・別に」

俺は慌てて顔をそらした。ここは屋上で誰がいてもおかしくない。ん?今度は俺が見られてないか?

「なんか、あんたの顔どっかで見たことあるんだけど」

その男は、腕組して俺の顔を見ている。俺は慌てて黒ぶち眼鏡をかけて立ち去ろうとした時その男は手を叩いた。

「あぁ!俺ん家の近所の犬のジョージに似てるんだ」

「犬?」

俺は予想外の答えに呆れた。というか意味分かんねぇよ。そのまま緩んでいたネクタイを締め直し俺はその男を置いて屋上を去った。

「ふーん、あいつか」

男は軽く笑った。まさかこれが俺の人生を大きく変えるなんて思うはずもないー―――


黒ぶち眼鏡をかけ、ネクタイを締め直し教室に着くと、もう誰もいなかった。どうやら屋上で寝すぎたらしい。

「あいつ誰だ?」

屋上で見た見知らぬ男は何だ。人を犬扱いして。思い出すと少し腹が立ってきた。カバンも持って疲れた足をひきづって家に向かった。家に着くと、机の上には両親の写真が飾ってある。

「ただいま。父さん、母さん」

眼鏡をはずし、制服を脱ぎ、ラフな服装に着替え、夕飯の準備の仕度をするのが毎日の日課だ。両親が死んでから半年。料理も洗濯も慣れたものだ。母さんは、清潔好きで、料理が上手くて優しい人だった。父さんは、空手道場を経営していて、体格もよく、笑顔が眩しい人だった。写真の隣にはお守りがある。端が少し焼け焦げている。俺の両親は火事で死んだんだ。早めに飯を済まして、味気ないTVを見てもちろん勉強なんてするはずもなくベットに入った――――

重く黒い煙で目の前が覆われていて、周りは轟音をあげて火の粉が舞っている。夜中のはずなのに、外はざわめきでいっぱいだ。

「父さん、母さん」

俺は手探りで声の限り叫んだ。その度に、肺に煙が入り咽る。それでも俺は呼び続けた。父さんと母さんは寝室ではなく使われていない物置の前にいた。すでに、二人は火に囲まれていた。

「父さん、母さん、早く逃げよう」

俺は二人に手を伸ばした。

「悠人、先に行きなさい。父さん達もすぐに行くから」

「悠人これを持っていって」

俺が手を伸ばして掴んだのは、二人の手ではなくて大きな袋とあのお守りだった。父さんが何か言っているようだったが俺の意識はそこで途絶えた。父さんの口が動いてるのだけが、頭に残っていた。そして、次に目を覚ましたのは病院のベットだった。


そこで目覚ましの音。夢はいつもここで終わり。母さんがくれた大きな袋、よく見覚えのある袋は、部屋の隅に置いてあるけど、一度も開けていない。開けたくない。だるい頭を無理に起こして、学校への準備をした。学校を休みたいのに、真面目にもちゃんと行く俺の性格が嫌いだ。黒ぶちの眼鏡に、きつく締めたネクタイ、欠伸を一つして、俺は家を出た。いつもと変わらない風景。今日は遅刻せずにすみそうだ。

校門を通りすぎ、靴を履き替え教室へ向かう。いつもなら、あの集団に絡まれるのだが、今日は姿が見えない。

「今日は運がいいかも」

独り言のように呟き、気分よく教室のドアを開けた。誰かと挨拶を交わす事なく、窓際の席に座り、ぼんやりと空を眺めていた。

「なぁ、聞いたか?隣のクラスにすげーかわいい子が転校して来たらしいぜ」

「こんな時期にかよ」

「確かにな。ま、いいじゃねーか。あとで見に行こうぜ」

「おぉ!そういえば、隣のクラスに野次馬たくさんいたしな」

「オレ、アドレス聞いちゃお」

俺の隣の席の奴らの会話。ただ空を眺めていると嫌でも隣の会話が耳に入ってくる。俺がその会話に加わる事は決してない。なんたって、俺は嫌われているからな。

始業のチャイムが鳴ると教師が急いで教室に入って来て、生徒を静かにさせた。俺は興味なさそうに窓の外を眺めていた。

「えーと、今日はうちのクラスに転校生が来た」

「先生!転校生は隣のクラスでしょ?」

女生徒が質問した。

「隣のクラスにも転校生はいるが、実はこのクラスにもいるんだ」

「マジで?男?女?」

誰かが質問すると、全員気になっていたらしく、教室が静かになった。

「・・男だ」

一斉に教室中で声が上がった。主に、女生徒の。

「とにかく紹介するからお前ら静かにしろ」

教師は疲れたように言うと、教室の外にいる転校生を中に呼び入れた。その瞬間、再び女生徒の歓声が起こった。所々で、ヒソヒソ何かを話す声や、笑っている声。大方、転校生がカッコ良かったのだろう。俺は、入って来た転校生を見なかった。

()(づき) (りょう)です。よろしく」

転校生が笑顔で挨拶すると女生徒は一層盛り上がった。俺はその挨拶をなんとなく聞いていてはっとした。このよく通る声は、耳覚えがある。目線を窓から黒板の転校生にずらした時、思わず声を出してしまった。一斉に俺に視線が集まった。俺はただ驚いて転校生を見ているだけだった。

「ん?やぁ、ジョージじゃないか。そうかこのクラスだったのか」

その男は俺に気づくと気軽に話しかけていた。

「!!」

その男は昨日屋上にいたあいつだ。俺は犬に似ているとか言った、確か犬の名前はジョージだ。て、そんな事考えてる場合じゃない。

「ジョージ?遊月君。あいつと知り合いなの?」

クラスの女生徒が転校生に聞いた。転校生は少し考えると、笑顔で答えた。

「ちょっとね。あいつと俺の秘密」

「ちょっと・・」

俺は変な誤解が生まれる前に弁解したかったが、それは教師の言葉によって遮られた。

「蕪螺木の知り合いか。なら遊月はあいつの隣の席でいいな。蕪螺木、いろいろ案内してやれよ」

教師がそういうと、女生徒が不満を漏らした。

「いいか、お前ら授業を始めるぞ」

俺は言うタイミングを完全になくし、一人うろたえるしかなかった。俺の隣に転校生が来ると、やはり美形だ。周りの男が霞んでしまう。昨日と違いその顔には、眼鏡がかかっている。俺みたいな黒ぶちではなく、薄いレンズでその眼鏡がより一層かっこよさを引き立てている。その転校生の周りの男はなにやら不満そうだ。

「よろしくな。ジョージ」

転校生は俺に笑顔を向けた。普段はクールに見えるその顔は、子供みたいな笑顔だった。て、だからジョージじゃねぇよ!俺はただ頭を下げただけだった。そして、次の休み時間から俺に学校案内をして欲しいとその男は言ってきた。俺は、断る事も出来る訳なく、渋々了承した。昼休みになり、ほぼ学校内の案内も終わりかけていた。俺は必要最小限の言葉しか発しなかったが、その男は物珍しそうに学校を見ていた。各教室の前を通りすぎるたび、女生徒がその男を振り返る。たぶん、今俺の存在は霞んでいて誰の視界にも入っていないだろう。もっとも、普段から視界に入っていないだろうけど。

そうこうしているうちに、嫌な奴らに会った。どうやら彼らの視界には俺が入ったらしい。薄ら笑いを浮かべ近づいてくる。

「お、蕪螺木君じゃん?相変わらず調子こいてっか?」

「調子なんてこいてないよ」

俺は答えたが、集団は無視し話を続けた。周りにはギャラリーがたくさん見てるし、俺は早くどこかに行きたかった。

「あんた転校生の遊月君だろ?遊月君もそんな奴といない方がいいって。俺らのグループに来たら?歓迎するよー」

俺は当然、転校生は向こうに行くと思っていた。

「悪いけど、友達くらい自分で選べるから」

「は?」

「だから、俺はあんたらのグループには入らねぇよ。て事」

にっこりと笑みをその集団に向けると、唖然として転校生を見上げていた俺にも笑顔を一つくれた。

「行こうか、ジョージ」

「え?あ、うん」

その集団をその場に残し、俺たちは屋上に向かった。ちょうど、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。屋上には、涼しい風が吹いている。今日いい天気だ。唯一俺の心が休まる場所のはずなのに、隣には転校生。何でこんな事に・・。

「なぁ、ジョージ」

「だから、俺はジョージじゃないって言ってんだろ?あんた一体何なんだよ?」

「だって、俺あんたの名前知らないし」

確かに。しばらく考えて、別に仲よくなりたくもないのに、名前なんて教えたくなかったが、この先ずっと人前で“ジョージ”と言われるのを想像すると恐ろしくなった。呼ぶなといってもこの男は呼ぶだろう。そのくらいは、この短時間この男と過ごしただけで分かった。

「・・・蕪螺木。蕪螺(かぶら)() 悠人(ゆうと)

「ん?蕪螺木ね。俺のことは亮でいいから」

「はぁ」

子供みたいな笑顔を亮は俺に向けた。

「なぁ。蕪螺木。なんで言い返さないの?」

「え?」

「だから、さっきの集団。何か腹立たない?」

亮は、コンクリートの上に座り眼鏡を外した。風が、亮の長い髪を揺らしている。俺もその隣に座った。

「別に。いちいち言い返してたら、キリがないから」

「ふーん。蕪螺木はおとなしい奴なんだな。もし俺が校長だったら」

なんであんたが校長になんだよ。口に出しては言わない。

「あいつらは停学だな。いや、退学か?」

「いくらなんでもやりすぎじゃない?」

どう考えてもおかしいだろ。

「なんで?はっきり言って学校なんて楽しむ場所だろ?ああいう奴らは好きにはなれない。ま、最終的には俺さえ卒業出来れば、他の奴らなんてどうでもいいだろ?」

地球を回しているのは遊月君ですか?俺は内心呟いた。

「そうだね。俺も他人にあんまり興味がないから」

俺はやんわり亮をつき離してみた。一刻も早くこの場から立ち去りたい気分だ。亮は、つまらなそうに俺の顔を見た。そして、突然言った。

「自分だけでなく、他人を愛すること」

亮はまるで教えを説くように語りかけた。

「何?それ」

俺は意味が分からず聞いた。しかも、どうやらつき離そうとして俺は言った言葉は全く無視されていた。

「オードリ・ヘップバーンって知ってる?」

「映画女優の?」

「そう」

「その人が言った言葉なの?」

「そう」

「へぇー、好きなの?」

意味が分からなかったが、一応驚いてみせた。ところが、

「別に」

あーそうですか。もう勝手にして下さい。亮と話していると、何を言い出すか分からなくておもしろくはあったが、時々腹が立つ。

「で?その言葉が何なの?」

「蕪螺木に贈る言葉」

「は?」

「蕪螺木は他人に興味がないんだろう?そんなじゃダメだぞ。そんな重たい眼鏡かけて、きつくネクタイ締めてたら、見えるものも見えなくなってしまう。もっと、他人と関わりを持ったほうがいいぞ?」

出来ることなら、亮との関わりは遠慮したい。が、もう手遅れだろう。俺は亮の言っていることが正論すぎて何も言い返せなかったが、認めたくもなかった。しばらく沈黙になり、俺は耐え切れずに言った。

「あ・・あんたは何で眼鏡かけてるんだ?最初はかけてなかったよな?」

亮はたいした事はないとでも言うように、俺に眼鏡を見せた。

「これ、度入ってないから。俺ぐらいイイ男だと眼鏡でもかけてカモフラージュしないと危険だからな」

おっと、君は世界の中心に立っているんだったね。一つ言わせてもらえば、俺がもし世界の中心に立てたら、愛なんて叫んでないで、亮への不満を叫ぶよ。

「それに・・」

「え?」

「それに、この世界には視えなくていいものが多いだろ?」

亮の顔は笑顔だった。けど、今までの顔とは少し違うと思った。見間違いだろうか。亮の顔はいつものクールな顔に戻っていた。

「蕪螺木。なんで走らないんだ?」

俺は、一瞬にして全身が強張るのを感じた。

「知らないわけないだろ?当時新聞とかいろいろ出てたしな。お前の名は全国区だよ」

「昔の話だろ?今は関係ねぇよ」

俺は立ち上がりドアの方へ歩き始めた。手が妙に汗ばんでいる。

「おとなしいふりしてんなよ。逃げんのかー?」

亮が後ろから言った。俺は、我慢出来ずに振り返り怒鳴った。

「うるせぇ!!俺は走るのが嫌いになったんだよ」

冷たい目を亮に向け、屋上のドアを思い切り閉め教室へ向かった。高校に入って初めて怒鳴った。

「おぉ、怖。やっぱおとなしい系じゃないな」

一人屋上にとり残された亮が笑いながら呟いた。

「あーあ、何怒らしてんの、亮」

亮のさらに後ろのフェンスに一人の少女がいた。

「ヒヨリ」

蕪螺木が屋上から出て行ってから誰も入って来ていないはずの屋上。いつからいたのか?どうやって入って来たのか?亮はそんな事どうでもいいかのようにその少女に向き直り知り合いのように話した。

「ヒヨリ、お前は手を出すなよ?この件は俺やるから」

「別に言っけどさ。あんま無茶すんのやめなよー」

「分かってるさ」

亮はふいにフェンスの下側を見た。そこはグラウンドで陸上部が走っているのが見えた。



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