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第二夜 狩人



白銀の銃弾は貴方の心臓に、黒金の刃は私の心臓に


流れ出る鮮血が貴方と私を繋ぐ


そこに差異は無く貴方と私は血溜まりの中で一つになる









死ノ舞ウ夜ニ―前夜祭―


第二夜 狩人






咲夜はただ一人道路を歩いている。陽はもう沈み辺りは薄暗くなっている。

だが薄暗いからといって人が全くいないのはおかしい。静まり返った町並みは

まるで住民が全て死に絶えたかのように咲夜の足音意外全く聞こえない。


「やれやれ、いい加減出てきたらどうだいシャル?」


咲夜がため息混じりに呟いた瞬間、建物などの影が一箇所に集まりそこから黒い

ドレスを着た銀色の髪に紅い瞳をした美しい女性が現れた。


「あらあら咲夜ったらつれないわね〜」


咲夜しかいない静まり返った町並みに銀髪の女性【シャルロット・ベルナール】の

声が響く。咲夜は呆れたような表情をしてまた大きなため息をついた。


「ハァ、わざわざ人払いまでして一体何の用?」

                                

「むぅ、ちょっと聖堂会のやつらにちょっかい出してたら私を追ってる狩人の

やつらにバレちゃってずっと追いかけられてるのよ。全くあいつらもいい加減

しつこいったらありゃしない。」


「追っ手なんて始末すればいいだけじゃないか。」


咲夜が肩を竦める。

『追っ手を始末する』それはいたって簡単なことなのだ目の前の美しい女性にとって。

【紅い地獄】と呼ばれ恐れられている吸血鬼の彼女にとって。


「それが簡単にはいかないのよ。どこから持ってきたのか知らないけど

最高位の退魔装備に身を包み、教会に祝福された銀の剣や銀の銃弾を全員が

装備してるんだからたまったもんじゃないわよ。」


「へぇ、それはすごい。まるで【奴ら】の再来みたいだ。

是非一度会って殺しあってみたいものだよ。」


咲夜が冗談めかして笑っていると背後から背筋が凍るような張り詰めた殺気が

漂ってきた。振り返ると100メートルほど先の建物の陰に顔を隠すような黒いローブを

着たやつらが10人いた。どいつも手には銀の剣や銃を持っていて注意深くこちらを窺っている。


「・・・やれやれ噂をすれば何とやらってところかな。」


そう言って肩を竦めると咲夜はコートのポケットの中から一振りのナイフを取り出した。

ナイフは刃渡りが10センチぐらいの飾り気の無い少し無骨などこにでも売っているような

普通のナイフだ。そのナイフが今出たばかりの淡い月の光を反射してきらきらと輝いている。


「あらあら、ヤル気満々ね?」


「まぁ、ねッ!!」


咲夜は姿勢を少しずらし一気に走り出す。そのスピードは一般人では視界に捉えることも

不可能なぐらい速い動きだ。そして咲夜は狂ったような笑顔を浮かべ一瞬にして隠れている

奴らとの距離をゼロにした。黒いローブ達も100メートル先にいた標的が急に目の前に

現れて少し動揺するがすぐに手に持つ武器で反撃する。辺りに銃声が響き渡るが咲夜は

相変わらず嗤ったままで傷一つ負っていない。


「・・・遅いよ。」


咲夜の姿はフラッと一瞬残像を残して消え次の瞬間には黒いローブ達の後ろに現れる。

すると少し遅れて鮮血を撒き散らしながら五つの首が宙を舞った。


「さぁ、かかってきなよ?惨劇はまだまだ始まったばかりだ。ククク、アハハハハハ!!」


狂ったような嗤い声を上げて咲夜は腹を抱えてひたすら嗤う。綺麗な口元も醜く歪み

特徴的な紅い瞳はギラギラと輝いている。敵を殺してその血溜まりの中で嗤うその姿は

まさに【嗤う死神】そのものだ。


「ク、ククククク、どうしたんだい君達はかかってこないのかい?」


一瞬で仲間の半数を殺され呆然としていた者達がふと我に返り自分達が持つ得物を強く

握り締め一斉に咲夜に向かって飛び掛っていった。

だがどの攻撃も当たる寸前で悉く回避されまたは捌かれて咲夜までは届かない。


「君達の力はそんなモンかい?・・・・・あんまり弱いと刎ねちゃうよ?」


咲夜が呟いた瞬間また一つ首が宙を舞った。

残された四人の黒いローブ達は懸命に攻撃を続けるが全く当たらない。

しかも、ボルテージが上がるようにどんどん咲夜の動きは速さを増していく。

はじめは何とか咲夜の動きを捉えることが出来ていた彼らも今ではその動きを

視界に捉えることすら出来ていない。


「・・・そろそろ終わりにしようか。」


自分に触れることすら叶わない黒いローブ達に飽きたのか咲夜は少し声のトーンを落として

ナイフを低く構える。そしてスッと手が動いたと思った瞬間残りの四つの首も宙を舞っていた。


「・・・・・終劇、だね。」


さっきまでとは違い少し冷めた眼で呟いた後咲夜は空を見上げた。

蒼白く煌く月は吸い込まれそうなほど美しく、と、とても、とて、も腹部、が熱、熱い

そして、・・・・・痛い






「・・・・・!?」


咲夜の腹部からは見事に銀の刃が生えており溢れ出る熱い血が深紅のコートを更に

紅く染め上げていく。




・・・・・振り返るとそこには先程首を刎ねたはずの一人が全く無傷で立っていた。






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