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用無し女の奮闘生活  作者: シロツメ
無謀な奪還の章
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言葉にしなければ分からないもの(1)

 「アメリスタ家に代々、直系の子孫のみに伝えられていることがある」

 腰を下ろすと思わずびっくりするくらい柔らかいソファに座らされ、侍女が紅茶をテーブルに置いて出て行った後、アメリスタ公は静かに語り始めた。

 森田セイジはエンダストリアを勝利へ導いた後、帰還を望んだ。元々そういう約束だったからだ。だがそれは果たされなかった。エンダストリアは帰還方法など知らなかったのだ。敗戦の危機に切羽詰まって頷いた、ただの口約束。そのことに一時絶望したセイジだったが、今からでも良いから調べて欲しいと願った。しかし時は終戦直後。治める者がいなくなって荒れたオートメイアを支配するのに手こずり、戦勝国であるエンダストリア内もかなり混乱していたため、帰還方法の研究をしている余裕などなかったのだ。

 セイジは待った。召喚から数年、元の世界でどれだけの時が流れているか分からないが、待てばいずれ帰還について研究を始めてくれるだろうと信じていた。しかし高度な文明の武器に触れてしまったエンダストリアは、救世主を手放しはしなかった。彼に与えられたのは、召喚や帰還のような大掛かりな魔術を使うことなどできない、元オートメイア領だった土地、エンダストリアの爵位、アメリスタという名、そして財産だった。それと引き換えに、今後の有事にはエンダストリアに協力せよということだった。今度こそ絶望したセイジは、知識と技術への謝礼として与えられたものを受け取り、太陽電池やスタンガンに関する資料の全てを持って領土にこもった。彼は再三来る召集令に、一度も応じたことはなかった。そしてエンダストリアも、異界の武器の生みの親、しかも資料を全て持っていってしまったセイジに、協力しないからと言って、下手に手出しをすることはできなかった。

 やがて協力を諦めたエンダストリアは、救世主召喚の事実そのものをもみ消そうとした。当時のエンダストリア王とは、最も富と力を持った豪族が名乗っていただけで、その地盤と影響力は不安定なものだった。故にオートメイアを滅ぼした一番の立役者が異界の救世主で、今後その知識も技術も失ってしまったということが、民や下克上を狙う貴族達に知れると、この地の王として立っていられなくなるのではないかと危惧したのだ。こうして後に書かれた建国史から異界人召喚記録は消え、セイジにはアメリスタを名乗り口を閉ざせば、税を減免し好きに領地を治めることを許可した。







 「何故口を閉ざすことを了承したんでしょうか」

「口を閉ざしても帰還方法の研究はされないが、例え救世主を名乗り出ても、それで内紛が起こり、エンダストリアがごたつけば同じこと。どちらにしても結果が変わらないのであれば、争うだけ無駄だということだろう。」

帰還方法が分からないのに呼び出されて、国の危機を救えば地位と財産を与えられる。同じことを、私が召喚された初日にバリオスさんが言ってたような気がする。200年経っても考えてることは一緒なのか。どうやら森田さんは、自分で調べることすらできないまま、アメリスタの地へ篭ってしまったようだ。私が見つけた建国の文献は、彼がアメリスタに行った後、エンダストリアが召喚とスタンガンの事実を隠蔽いんぺいする前の、ごく限られた期間に書かれた物だろう。私は偶然にもそこから帰還のヒントを得ることができたのだ。戦争に有利な知識を何も持たないからこそ、自由に召喚術のことを調べられた。皮肉なものだ。このことを森田さんが知ったら怒り狂うことだろう。

 「アメリスタがエンダストリアを嫌う理由は分かりました。でも、恨む当事者は初代だけですよね。子孫は初代のおかげで税も少なくて、楽に暮らせてたんじゃないんですか?初代が戦争を起こすならまだしも、何故200年も経ってから起こす必要があったのか、理解できません」

「当初アメリスタには軍が無かった。それは初代が軍事に関して全く関知していなかったからだ。物を作り出すのが専門で、戦のことは素人だったようだ。だがそれも200年経てば変わる。我々子孫が、初代の遺言を実現させるため、代々秘密裏に軍を拡大してきたのだ」

「その遺言が、独立を口実に戦争を起こして、エンダストリアに飲ませたいという要求なんですね。」

感づいた私に、アメリスタ公は大きく頷いた。彼はスッと立ち上がると、鍵のついた引き出しを開け、金で模様が描かれた高級そうな細長い箱を取り出した。

「これが遺言状だ」

「私が見ていいんですか?」

大事な物のはずのそれをあっさりと手渡され、少し戸惑った。

「見せるためにここへ呼んだのだ。さあ、開けてくれたまえ」

どうやら私と会う目的はこれだったらしい。読むだけていいのか。少し安心した。

 傷が付きやしないかと、恐る恐る箱を開けると、古びているが丁寧に丸められた紙が入っていた。

「それには君にしか読めない部分があるはずだ。何と書いてあるのか読み取って教えてほしい」

「私にしか?」

留め紐を解き、そっと丸まった紙をひろげた。中は大部分がエンダストリア語で書かれていたが、、終盤に翻訳ピアスを使わなくても読める、見慣れた文字が並んでいた。

人気ランキングその2です。少々順位が変わりました。


●1位…トニー

 不動の一位です。スカルでサヤに迫ったシーンで「よく頑張った!」というメッセージを多々いただきました。


●2位…ぽっちゃり大臣

 新しい男前の境地を作り出したらしいです。前回の少数派から一気にファンを増やしました。


3位…ディクシャール

 本人は「惚れてない」と言っているにも関わらず、その思わせぶりな言動に皆さんに色々想像されてしまっているようです。


4位…フォンス

 アメリスタに行ってから登場回数が減り、ちょっと存在を忘れられがちかも。


5位…サヤ

 捻くれた性格ながら、そこがいいと地道に票を獲得。


6位…バリオス

 エレクトリックガード開発と旅立ちの手助けの時に、一気に見直されました。


7位…ルイージ

 「苛々する」「罰が当たれ」等のマイナスイメージが多いにも関わらず、「きっと何か訳があるはず!」という謎のファンがチラホラ。


8位…リリー

 「根がいい子というのが分かった」「サヤとの友情が良い」という意見で、恋敵のマイナス票が意外にも全く無く、ライトなファンがいました。


9位…ミシェーラ

 「かわいい」というまさかの意見が数件。


10位…コートル

 サヤがを王宮を出てから全く登場していないので、票数は変わらず。


無投票…トリフ

 見せ場はほぼありませんからね。仕方ないです。ドンマイ。

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