表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用無し女の奮闘生活  作者: シロツメ
番外編(another story)*残酷描写あり
121/174

狂想散花(7)

残酷描写あり

 薄笑いを浮かべたキートは、抜いた打矢をそのままヴァーレイに投げつけた。それを避けようと、ヴァーレイは床に転がり込んむ。

「そうそう、こないだの玩具おもちゃは壊れちまったから、新しいのを貰ったんだよ」

キートはナイフが入っていたのとは反対側のポケットから、スタンガンを取り出した。

「それは……」

ヴァーレイが尻を付いたまま後ずさる。キートは更に笑みを深めて思った。そうだ、その顔だ、もっと怯えて見せてくれ!

「あれ、足、どうかした?くじいたとか?」

「うるさい」

一歩一歩キートがヴァーレイに近寄る。

「もう?早過ぎるって。ちんちくりんな女にうつつ抜かしてるから、そんなことになるんだ。」

「…貴様!」

キートは背筋がゾクゾクするのを感じた。怯えも良いが、怒りもまたオツだ、と。

「この玩具はね、ちょっと面倒なんだ。定期的に使えるかチェックしないと、動かなくなるんだって。だから、これを持って潜入した4年前から、エンダストリアで何人かに試してたんだ。本当は先っぽに放電が起こるか見るだけで良かったんだけどさ、実際殺せるか試さないと面白くないだろう?」

「4年…前?」

少しヴァーレイが反応を示したが、キートは構わず続けた。

「そう、4年前。その辺りからネスルズで、何ヶ月かごとに、人が急に死ぬことがあったの、覚えてるかい?王宮で兵士相手にやると面倒だから、一般人に試してたんだよ。同じ死に方だと怪しいから、殺した後に頭をガツンと割って通り魔っぽくしたり、首に縄をかけて自殺っぽくしたり。けっこう大変だったけどね。」

「…自殺じゃ、なかったのか…?」

「ああ?」

突然目を泳がせたヴァーレイを見て、キートは一端語るのをやめた。

「父さんと母さんは……、4年前に二人で自殺したんじゃ…」

「ん?お前の親の顔は知らないが、夫婦揃ってったこともあったぞ」

「…う……、うわあああああっ!!」

激情したヴァーレイは、足の痛みも忘れてキートに飛び掛った。だが辛うじて胸倉を掴むも、左腕を負傷したとは言え、エンダストリアで上級兵士だったキートには容易たやすく振り払われてしまう。

「ハハハッ!面白え!お前の親だったのか?」

「許さない!お前だけは絶対に許さない!!」

再び転がり込んだヴァーレイに、スタンガンを構えたキートが圧し掛かる。もがきながらもヴァーレイはふところを探った。

「ああ、最高だ。その感情が欲しかったんだ。満たされるってこういうことなんだな。ありがとう。お礼に親と同じ方法で殺してやるよ」

キートがスタンガンを繰り出した刹那、ヴァーレイもそれを殴りつけるように、小さな板を突き出した。

 バキィンッ

板は一瞬で砕け散り、間を空けずにヴァーレイは、一瞬ひるんだキートの腹を蹴り上げた。

 ヴヴヴヴヴッ……

「がぁ!」

転がったキートの右手に持たれたスタンガンが鉄格子に当たり、流れた電気が床に広がったたるの水を通して、そこに触れていたキートの左腕を襲った。

「な、何だ?」

丁度水に触れていなかったヴァーレイは、不思議な音と共にいきなり声を上げたキートに驚いた。

「くそぅ…」

電気に触れたのは一瞬だったが、キートは左半身が痺れて思うように起き上がれない。ヴァーレイは攻撃のチャンスと分かっていながらも、キートが急にもがき出した理由が分からず、迂闊うかつに近寄れないでいた。

 何とか次の手を考えるヴァーレイの目に、上へ持ち上がった鉄格子が映った。その下には倒れこんだキート。

「だあっ!」

ヴァーレイは先程投げ返された打矢を探し、持っていた残りも全てポケットから出して構えると、鉄格子を支える引っかかり目掛けて投げつけた。

 1本、跳ね返される。2本、まだ衝撃が足りない。3本目と4本目を同時に投げる。あともう少し…

 ガッ…………ヂャンッ!!

3本同時に命中させた時、鉄格子がキート目掛けて勢いよく落ちた。

「あ゛あ゛あ゛ーーー!!」

咄嗟に身を返そうとしたキートだったが間に合わず、動かなかった左腕が床と鉄格子に挟まれた。そのまま視界がぼやけていく。

 「トニー!」

薄れ行く意識の中で、キートは声を聞いた。

「トニー、どうしたの!?」

「…姉さん、どうしたらいいんだ?倒したのに……」

「倒した?あいつ…、キートね?」

「父さんと母さんのかたきったんだ。なのにまだ、心が晴れない。ムカついてムカついて、堪らない。憎しみがなくならない…!どうしたらなくなる?この腹の黒いものを、どこにぶつけたいらいいと思う?」

「仇って……、自殺じゃなかったの?」

ヴァーレイは涙声だった。キートの目はもう何も見えない。ただ声だけが聞こえる。

「ああトニー…、一人で背負ってはいけないわ。ごめんね、私が放ったらかしにしていたからなのね。これからはちゃんとあなたを見ているから、あなたの苦しみも寂しさも、全部分けて頂戴。ごめんね、駄目な姉さんで、ごめんね……。」

 リリシアの声も段々小さくなっていき、キートは意識を完全に手放した。

戦闘シーンに関するご意見は受け付けられません(キリッ)

トニーの両親が4年前に死んだという話は、「年下の扱いは難しいもの(4)」のリリーのセリフに一瞬出てきます。


エピローグあります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ