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35.テント
坂道を下りながら
街を見た
きらきらと灯りが飾る
まだ見慣れない街を
空は暗幕を張ったようで
細い月が西の方に見えた
爪を立てた痕に似ている
そこから真昼の光が
暗いテントの中にこぼれる
この星の半分もあるテントの中に
君はいますか
丸ごとひとつよりは狭くなった捜索範囲に
本当に君はいますか
まったく同じでなくても近い角度で
あの爪痕のような月を見ていますか
僕はどうか君が見る月を
雲が隠さないようにと祈るばかりです
同じテントの中
たくさんの人と一緒に君もいるなら
僕にとってこんなに幸せなことは
ないんです