30/37
30.こいびと
もう一度あいたいひと
そうもちろん君です
もう一度
もう一度だけでいいから
目が覚める直前まで君の笑い声が聞こえてたよ
毎日のように聞いてたころはなんて恵まれてたんだろうね
きっと今君の声はあのころと違うから
薄れてく記憶に頼るしかない
君の顔 正面よりも横顔を覚えてる
後ろ姿 猫背の角度 歩き方
髪の色はもう曖昧なのに 硬めの感触はまだ
皮膚の色 やわらかさ 手の指の爪の形
冷えた手の温度も
壊れそうだった拍動も
こんなにも確かな気がするのに
ね、
このあいだ あったとき
目があったでしょう?
ほかにだれもいなかったら わたし
だきついてたとおもうよ
だいすき
まだ
いちばん すき
だからいまのうちに
また
もう一度
もう一度だけ君にあえたらいい
そしたらきっと 判断もつくから