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29.歌
いつかの放課後
友達にあわせて好きな歌を口ずさんだら
君がすねて黙った
失恋ソングは嫌だったよね
別の放課後
君と何人かでカラオケにいった話を聞いた
今度は私がすねた
仲間はずれは嫌に決まってる
いつかの土曜日
願ってねだって諦めきったとき
君が小さく歌ってくれた
確かに聴いたはずの不安定な音の歌は
歌う君の声は
どんなだったろう
思い出せないよ
取り戻せないよ
宝物が少しずつ消えていく
卒業アルバムに写ってるのは私だけの君じゃない
私にだけ聞かせてくれる声が
見せてくれる顔が
何よりの宝物だった
椅子に座る君
その横の床に座った私
君が小さく歌ってた
あのとき聴いたはずのかすれ声の君の
歌は