12.わんこ
僕はきっと君より早く死ぬよ
君が天国へ行くなら僕は地獄へ 選ばなくてもそうなるでしょう
かわいそうって言ってくれるならどこへも行かずに地べたでも空でもない高さで君を見てるよ
ストーカーとは言わないと思うけどもし言うなら天国の入り口で君を待ってるから
そばを通るとき一瞬にすら満たない時間でも笑いかけて
生きることは苦しみだなんて誰が言ったの
僕を君を苦しめるのは生きてることだってわかりきってるんだよ
いつかふたりの体が朽ちて土に風に還るときは
僕だった分子のひとつでも君だった分子のそばに
そっとそうやって君とともに
僕の心臓が止まる日がきたら僕は笑って眠れそうだよ
思い出すのはきっと君のことだけこの上なく安らかな最期でしょう
でも君に立ち会ってもらいたくはないな
信じられないままで天国まで来てよ
入り口には番犬代わりに僕がいる予定だから
そこでわかったって天国なら悲しみもないでしょう
君が地獄になんて行くわけないでしょう
僕以外に君を地獄に落とすものはないでしょう
僕の死因はきっと自家中毒
君の笑顔を言葉を消化して吸収して生きるのに使ったそのときどこかで毒が出るの
君しか受け付けないこの心が壊れかけてきてるから
他の誰かを愛さないといけないの
でも君だけが心の栄養だから過剰摂取で病気になっても今がもう病気だから
治る見込みはなくて鎮痛剤くらいしか効かなくて
その薬だって君の声なのそれだけが救いなの
この体を心を蝕む毒に対抗するけど症状は進むの劇的に
もちろん君のせいじゃない悪いのはどこかでねじでも落としてきたらしい僕自身
だから悲しそうにしないで笑ってて誰かの隣で
見上げて僕はときどき泣くけどつられて笑うなんてできやしないけど
こっちを見ないで振り返らないで立ち止まらずに行ってしまって
僕の大好きな手をさしだしてこの罪深い僕を
許すなんて言わないで