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1 桃、十六歳!

「んーーーいい天気!気っ持ちイイーー!」

 その日の朝、私は玄関を出て大きく息を吸い込んだ。

騎美都きびつもも、今日から十六歳!行ってきます!」

 持ち前の元気を全開にして私は言った。


「はい、行ってらっしゃい」 

 母親はいつものおだやかな調子でそう言って、鼻息はないきの荒い私を送り出してくれた。


 そう、今日は私の十六歳の誕生日。

 何故なぜか「十六歳」という響きには子供の頃からあこがれていた。

「十六歳といえばもう大人!」

 ずっとそう思っていた。

 大人の階段を登り始めるとし、そういう響きが「十六歳」にはあるのだ。

 まあ、実際は十六歳も子供なんだけれど……。


 そんなことを考えながら駅に向かって歩いていると、

「桃ぉおおーーおはようーー!」

 と、後ろから私を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。

 振り返ると、友達の月竹つきたけ華耶かやが太陽のように晴れやかな笑顔で小走こばしりに走ってきた。

 ポニーテールをふりふりしながらけ寄ってくるその姿はもう、

(かっわいいーー!)

 の一言に尽きる。


「おはよう、華耶!」

 私が立ち止まって挨拶を返すと、

 私に追いついた華耶が私の肩に腕を回し、

「誕生日おめでとう、今日から十六歳だね!」

 と、祝いの言葉をくれた。

「ありがとうーー!」

「で、どう?十六歳ってやっぱ大人な感じ?」

「うん、もう私、すっかり大人の女だよぉーー」

「って、んなわけないだろっ!」

「えへへぇーー」


 なんて話をしながら、十六歳になっても今までと同じ、おバカで楽しい、いつもどおりのおしゃべりをしながら私達は駅に向かった。


 華耶は中学の頃からの親友だ。

 いつも元気で明るく、誰とでも仲良くなれる。

 一緒にいるとこっちまで楽しい気持ちにさせてくれる。

 そして、何と言ってもかわいい、まぎれもない美少女だ。

(平凡たぬき顔の私とは雲泥うんでいの差だよなぁ……)

 輝く笑顔で話す華耶を見ながら私は思った。


 やがて駅に着くと、さらさらストレートヘア、色白いろじろ小顔こがおの美少女が私達の方に向かって歩いてきた。

「……おはよう」

 伏見(ふしみ)狐々乃(ここの)、高校に入ってから友達になったクラスメートだ。

「おはよう、狐々乃」

「おはよう!」

 私と華耶が応えると狐々乃はふわりとした微笑みを返してきた。

 彼女は話し声が静かで所作しょさゆるやか、おしとやかなお嬢様という形容がピッタリな女の子だ。


(狐々乃も相変わらずかわいいなぁ……)

 そう、狐々乃は女子の私でさえ見惚みとれてしまうほどの美少女だ。

「今日はお誕生日だよね……おめでとう、桃」

 狐々乃は私の隣に並ぶように歩み寄ると、心持ち首を傾げ私の顔をのぞき込むようにしながらそう言って祝ってくれた。

「うん、ありがとう、狐々乃!」

 かわいさでは狐々乃に到底とうていかなわないことはわかっているが、

(気合だぁああああーーーー!)

 とばかりに、私も精一杯の笑顔で狐々乃に応えた。


 そうして、私達は三人揃って電車に乗った。

 私達の高校は郊外にあるので、通学は逆方向、行きは下りで帰りは上り。なので電車は比較的(ひかくてき)()いている。

 とはいえ、三人揃って座れることはそうそうなく、いつも車両の中ほどに並んで立つことになる。


 高校は三つ先の駅なので、三人で楽しくお喋りをしてるとあっという間に着いてしまう。

 駅に到着して電車を降りると、反対側のホームには既に上りの電車が着いていた。


 そして上り電車からクラスメートの河内(かわち)和叶(わかな)が降りてきた。

 和叶は私達に気がつくと手を振りながら小走りでやってきた。

「おはよう」

 和叶は平均よりやや小柄で細身、長めの髪をツインテールにしている。

(うん、和叶も相変わらずかわいい!)

 そう、彼女も思いっきり美少女だ。

 ただ、顔立ちが整いすぎているうえに、キッパリとした物言いをするところがあるので、人によっては彼女に冷たい印象を持つ者もいる。


「お誕生日おめでとう、桃」

「ありがとう、和叶!」


 でも、決してそんなことはない。

 多少言葉足らずなところはあるけれど、とても友達想いの優しい女の子だ。


(私って友だちに恵まれてるなぁ……)

 今日もしみじみと噛みしめる私だった。

 そして、

(楽しい一年にするぞっ!)

 そう、私は密かに決意した。


 こうして、私の十六歳が始まった。

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