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第2夜【夢のなる木】その2

夢のなる木の結末やいかに?

「なんと、夢のなる木と申すか」

「さようにございます」

「どういうことじゃ。八兵衛、わかるか」

「いいえ。とんと検討がつきませぬ」

「その方、嘘は申しておらんじゃろうな」

「めっそうもございません、お殿様。こちらは、正真正銘の夢のなる木でございます」

「どういうことか、詳しく説明してみるがよい」

「ははあ。夢がなると申しましても、この木になるわけではございません」

「では、どこになるのじゃ」

「この木の持ち主の、心の中になるのです」

「心の中にじゃと」

「さようでございます。この木の持ち主になった途端、心の中に夢の種がまかれます」

「それで、どうなるのじゃ」

「毎日、毎日、この木に水をやることによって芽が出ます」

「もう出ておるではないか」

「いいえ、この木ではございません。心の中の夢の種から芽が出ます。それからも、毎日、毎日、この木に水を与えることにより芽は育ち、やがて苗になり実をつけます」

「それが持ち主の夢ということか」

「さようでございます」

「八兵衛。信じられるか」

「とても信じられません」

「その方。この木が夢のなる木であると、何か証明できるものでもあるのか」

「夢のなる木は夢の実を付けます。実を刈り取る時、夢がかなうと言われております」

「なるほど。実を刈る時が、夢がかなう時でもあるということじゃな」

「さすがは、お殿様。お察しが早い」

「それで、この木の持ち主はおぬしなのか」

「さようでございます」

「ということは、おぬしの心の中には少なからず夢の種が芽生えておるな」

「すでに苗となり、実を付けております」

「あとは、刈り取るだけということか」

「その時、夢はかないます」

「本当にかなうのであれば、その方の夢のなる木が夢自慢大会の優勝である。だが、それを証明できれるかどうかだ。どうじゃ、できるか」

「簡単でございます。もっとも、お殿様次第でございますが」

「どういうことじゃ」

「私の夢は、この夢自慢大会で優勝すること。そのための大きな実がなっております。もしも優勝できたなら、願望は見事成就され、この木が本物であるという証です」

「わしが、その方を選ばなかったときはどうなる」

「この夢のなる木は偽者という証。お殿様も、こんな馬鹿話など信ぜず、今までどおり退屈な毎日をお過ごしくださいませ」

 お殿様は、しばし考え結論をくだしました。

「その夢、買った」

 若者は夢自慢大会で見事優勝を飾り、夢のなる木が本物であることを証明してみせました。その後、お殿様は毎日、毎日、夢のなる木に水をやっており、とても幸せに暮らしたということです。

えっ、若者はどうなったかですって。もちろん、大金持ちになりました。なんてったって、この若者の植木屋では、夢のなる木がバカ売れしているのですから…


夢とは思うものなり。かなえるものなり。いえいえ、夢とは信じるものなのです。

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