第2話
無人の高速道路を歩く水野と平野。
乗り捨てられた車は、渋滞のまま。
その合間を縫って、進む。
平野 装備
・右手:バイク
・背中:登山用の大きなリュック
水野 装備
・右手:アタッシュケース
・背中:普通のリュック
「ンザンビな〜前にwiki見た時思ったけど、ゾンビって言うよりかは超能力者って感じやな」
「〝不思議な力を持つもの〟って意味でしょ?死なないって不思議なことじゃない?」
「あー確かに言われてみればそうかもしれん…水野ほんま賢いな」
「あんたに褒められたところでね」
「ははっ!そのツンケンさが水野らしいわ!んで?これからどうするよ?また沖縄まで弾丸徒歩旅行にでも行くか?」
「あーはっは…あれはほんとに勘弁。だから今回は北海道まで行こっか」
「いやいやいや、アホなん?!今沖縄きつかったって言うたばっかやろ?!沖縄行くより遠いやろ!ここどこかわかる?愛知やで?愛知!」
「知ってるわよ。でも今回は、〝それ〟あるでしょ?」
水野が指差すそれ。
平野が担いでいるバイクだ。
「三代都市って知ってる?」
「なんやいきなり。大阪、東京…横浜?やろ?」
「愛知よ、このバカ。はぁーそれでね?私は思うの。ここを抜ければ、高速も空いてるんじゃないかって」
「あーそゆことか。人口多いし、その分、逃げようとした人がようけおるから」
「そそ。田舎にいけば、人も少ないしね」
「よっしゃー!そうと分かれば、キチキチ歩くでー?」
「はぁーそのあまりある元気、少し分けてほしいわよ」
「ええで?左腕空いとるし担いだろか?」
「冗談よ…はぁー流石に全くいないなんて、都合良すぎるわよね」
グゥガァ…
会話を遮るように、隙間からンザンビが現れる。
「いち、にの、さの、しの、ごってとこか。気晴らしにはちょうどええな?水野」
「ええ、そうね。でもこういう展開ってお決まりよね。前からじゃなくて、後ろからも湧いてくるのって」
ミズヒラ(水野と平野)の前に5人。
後ろから倍近くのンザンビが突如として、湧いて出た。
「はっはは!ゾンビ映画っぽいな!なぜか、突然現れるゾンビの群れ。いや、今までどこに隠れとったねん!ってツッコミたくなるやつや!」
「ほんとそれ。じゃー平野は前をちゃっちゃと片してきてくれる?」
「了解!噛まれんなよ?」
「そっちこそ」
平野はバイクを置き、前に向かって走り出す。
水野は、アタッシュケースを開き、中からアーチェリーで使う弓を出す。
腕をスワイプ。
折りたたみ式の弓が開く。
「ホークアイ様、力を貸して」
水野は超がつくほどのマーベル好きだ。
中でもホークアイがお気に入り。
流れるような動作で、横になっている矢筒を縦にし、蓋を外す。
人差し指と中指を入れ、矢を一本、取り出す。
矢にセット―――放つ。
矢は、ンザンビの脳天にクリーンヒット。
「よっし!次!」
何百、何千回と繰り返した動作。
矢は全て、脳天にヒット。
ゾンビの弱点は、頭。
これも、誰もが知る周知の事実だろう。
「いや〜ほんまいつ見ても水野の弓矢凄いな〜」
「そりゃどうも。褒めてもなにも出ないよ。ほら、また集まってくる前に行こ」
「ほいほい」
水野は、道具を中に片付ける。
平野は、バイクを担ぐ。
ンザンビは、一般的なゾンビと少し違う。
人間的知能が少し残っていて、戦略を立てることが出来る。
狩りをする狼のような動物的なものだが。
ひと段落し、落ち着いている今、この瞬間が、最も油断しやすいことを知っていた。
車の影。
2人のンザンビがいる。
息を殺し、機会を窺う。
「この車邪魔やな。水野、ちょい下がって」
「うん」
「おいしょっと」
空いている手で、車を軽々しく持ち上げ、道路の端に向けて投げる。
ガシャン!!
投げた車と置かれている車が衝突。
ンザンビは、そこにいた。
声を上げることもなく、車に挟まれ、あっけなく、死んだ。
「はぁーほんっとうるさい」
「あ!横にずらせばよかったな!は、はは…!」
睨みを効かせる水野。
罰が悪そうに、平野は先に歩いていく。
途中、首元から捩じ切られたンザンビが5体。
平野の服に、血が付着していた。