遠い記憶の中の君へ書く手紙
ふとした瞬間 白と灰色が入り混じったような
靄の中から君が現れる
忘れてしまいそうなくらい 遠い記憶
とても長い間一緒にいたような感覚だったけれど
実際はほんの僅かな時間だったと後から聞いた
名前も覚えていない君へ
手を繋いで 一緒に笑って
沢山庭を走り回ったあの日のことを
君は覚えていますか?
君の家から少し下ったあの川辺を覚えていますか?
私の声など もう忘れてしまいましたか?
どこか遠い場所で 同じ空を見上げていますか?
今見ている景色は 輝いていますか?
君の隣には君を大切に想ってくれる
優しい誰かがいますか?
君が一つ年上なことは覚えています
君が優しいことも覚えています
君が誰よりも幸せであることを願っています
幼い頃の遠い記憶
大切な部分だけが鋏で切り取られて
覚えているのはほんの少し
特に覚えているのは
君が泣いているところだけは
はっきりと覚えている
そんな記憶でも忘れたくないと思う