2-1章 一年祭
魔法交流会が終わり、バルセルクの入学試験まであと2週間になった。あれからは俺たち3人はバルセルク魔法学校への入学試験のため、ガジャの指導の下、魔法の練習の日々が続いていた。俺の魔法力も幾分か改善され、数か月前よりも戦闘技術が向上した。バルセルク魔法学校の入学試験は例年、実技一本であることが多いが、戦闘の際にも知識は欠かせないため、俺は暇なときはガジャから本を借りて魔法書で勉強もしていた。ガジャは曰く、魔法の基礎に関しては俺は3人の中で最も高く、応用と魔法力を磨けば、間違いなくバルセルクに入学できるというお墨付きをもらっていた。
そんなある日、今日は久々にガジャから魔法の練習はお休み、という風に言われていたので、俺はゆっくり家でガジャから借りた魔法書を読んでいた。マリンは朝早くから家を出て行って、俺が偶然マリンが外出しに行くところを見つけると、
「ついてくるんじゃないわよ」
と鋭い目つきでくぎを刺された。別についていく気など微塵もなかったが、いつも堂々としているマリンがこそこそと俺に隠れて何かをやっているような気がして俺はそこだけが気がかりだった。しかし、ついてくるな、と言われた以上俺もマリンたちのことを詮索するつもりはなかった。
午前中はひたすらにガジャに渡された魔法書を読み込んでいた。渡された魔法書を区切りのいいところまで読み終えると、俺は気分転換がてら外に出かけることにした。たまには引きこもらずに、外に出ることも重要なことだろう。
軽いジャージのようなものを羽織って、俺は外に出ると何やら大人たちがせわしなく動いているようだった。いつもは老人が多いせいか、ゆったりとした時間が流れるウィットネスだが、今日は誰もかれもがせっせと何かを運んだり、立ち話をしている。俺は様子が気になって、近くに木箱を下ろしたおじさんに声をかけた。
「こんにちは。何でこんなみんな忙しそうにしているんですか?」
「ああ、サトル君か。君はこの村に来てからまだ日が浅いから知らなかったか」
と自分の白いひげをさすりながら言った。何か行事のようなものが近頃行われるのだろうか。
「ウィットネスでは一年に一回、その年で何事もなく平和に過ごせたことをお祝いする一年祭というものが行われるんだ。」
「ひととせ...ああ、一年で"ひととせ"か」
こういった正月のような行事は、どこの国や世界でも存在するのか、と俺は少し感心した。俺はそういった行事ごとを好んでやるタイプじゃなかったが、こういうのに参加してみるのも悪くはないだろう。
「今年は、サトル君とマリンちゃんもこの村に来たからね。そのお祝いも兼ねてるって村長が言ってたよ」
「それはそれは、どうもありがとうございます」
俺とマリンが来てから、およそ5~6か月と言ったところだが、時の流れが速く感じるのは、この子供という体の独特の影響なのだろうか。
「いつに一年祭は行われるんですか?」
「一年祭は今から大体2週間後くらいに行われるって村長が言ってたよ」
「2週間後、か...」
2週間後は、ちょうど俺たち3人がバルセルク魔法学校の入学試験を行う期間だ。時期としては少々悪いところにぶつかってしまったのかもしれない。
「ああ、君たちは一年祭の準備はしなくて大丈夫だよ。おじさんたち大人に任せなさい」
「え、でも...」
「君たち3人がバルセルク魔法学校なんていう選ばれた人しか行けないところに言ったら、おじさんたちも鼻が高いからね。だから、ぜひ頑張っておいで」
おじさんの嬉しい気づかいに、俺は俄然、バルセルクに入学しなければ、という強い衝動にかられた。
「わかりました!絶対にバルセルクに合格してみせます」
俺はおじさんにバルセルクに絶対に入学するという強い意志を見せつけた。おじさんは「ああ、頑張ってね」と優しく俺に笑いかけた。




