1-95章 魔法行為流会閉幕
一悶着あった魔法交流会だったが、なんとか閉幕を迎えることができた。最後のマリックの騒動については、リックがルークが俺に対して、過度な魔法による妨害があったため、失格扱いとなり俺が優勝という形になった。俺もあの場では何が起きたかわからなかったため、大抵の人間はこの説明で納得してくれるだろう。
「優勝おめでとう。サトル君」
俺には玉入れの時とは違う、魔力人形を金でかたどられたトロフィーが授与された。正直に言って見栄えはよくないが、人々の惜しみない拍手に出迎えられて、俺は渡されたこの体では十分重く感じるトロフィーを両手で持ち上げた。
「そういえば、」
俺は最後の閉幕式が終わると、片づけを手伝いながらリックに話しかける。
「あの時、リックさんが使った魔法?、ギフトって何だったんですか?」
俺は手に持った椅子を一生懸命抱えながらそう聞く。リックは机の片付けの手を止めると、うーんと考え込む。
「別に秘密にしているわけでもないから、うん、教えてあげよう」
そういうと、リックは右手の指で大きく音を鳴らした。その瞬間、俺は何とも言えないような感覚に襲われる。そして、
「ほら、つまりこういうことだよ」
リックは手に持った椅子を持ち上げて、そう答えた。俺は自分の空っぽになった手を不思議に見つめていた。
「つまり...どういうことですか?」
あまりの説明のなさに俺も呆れかえっていた。「つまりそういうことだ」と言われても何が起きたかさっぱり訳が分からない。俺をこの人は何だと思っているのか。
「僕のギフト時間逆行は、5秒間時間を巻き戻すものだ。ギフトを使用すると5秒前まで時間が巻き戻される」
その説明だとさっき椅子を取られた理由や、ルークとの最後のやりとりの説明がつく。ルークは時間が戻される前は確かに俺に触れていて、俺はあのまま毒にさいなまれるはずだった。しかし、ルークがすぐに声をあげたため、リックが時間逆行を発動させて、5秒前に戻りルークが俺に触れる直前まで戻り、ギリギリルークが触れる前に何とかなった、というわけだ。
「そんなギフトとても強いじゃないですか。さぞ優秀な魔法師なんでしょう」
「そうでもないよ。僕は準1級魔法師だし、上には上がやはりいるよ。それに5秒なんて短すぎる。優柔不断な僕にとって5秒で決断するなんて、とてもむずかしいよ」
リックは俺の賛辞を否定すると、ゆるゆると首を振った。
「でも、その5秒が俺の命を救ってくれました」
俺はリックの顔を見上げる形で真剣にそういった。俺の言葉が意外だったのか、リックは大きく目を開いて固まっていた。しかし、すぐに破顔すると、
「そういってもらえると、嬉しい限りだ。こちらこそありがとう」
命を救ってくれた側が感謝を言うのはなんだか不思議な感じがするが、俺はその言葉をありがたく受け取らせてもらうことにした。
「そうだ。ルークが君と話をしたいと言っていたな。確かあっちで先生たちと片づけの手伝いをしてると思うから、こっちは任していってきたらどうだ?」
「こっちは大丈夫なんですか?」
「ああ。さいわい片づけを手伝ってくれる人はいっぱいいるからね」
そう言ってリックは後ろを振り返る。そこにはボランティアで魔法交流会の設営の片づけをしてくれている人がたくさんいた。これなら俺が一人離れても問題ないだろう。
「わかりました。それじゃあ行ってきます」
「ああ、行ってらっしゃい」
リックは軽く手を振って、俺を送り出した。俺はさっきの言葉足らずのやりとりを思い出して、親子はやっぱり似るんだな、と一人で思い出し笑いをした。




