1-93章 魔法交流会その33
俺は逃げられず、ルークにつかまれた腕を必死に引きはがそうとする。ルークのつかむ力は思ったより強く、俺は全身を使ってルークの腕から逃れようとする。
「!?」
しかし、ルークはすぐに俺から手を離すと、しきりに自分の俺をつかんでいた手を凝視していた。何ですぐに手を離したのか、その疑問を考えるより先に、喉元から焼けるような熱さがこみあげてくる。
「ああ...あ...」
俺は喉元を抑えて、ただみじめにそのかすれた声を出すことしかできず、倒れこんだままふと俺はルークの顔を見る。すると、彼は目に大粒の涙を浮かべながら、上空に浮いている人影を見る。
「親父!!」
ルークがそう叫ぶと、リックはすぐに異常事態であることを察知すると、俺たちのもとへと緊急降下してくる。そして、
「フォーリハルト」
そう短く言うと、パチンと指を大きく鳴らした音を最後に、俺は夢を見ていたかのように、喉の熱さはすっかりなくなっていた。しかし、既視感であるかのように、ルークの手がまるでビデオの映像を見返しているかのように、ゆっくりとその手が近づいてくる。しかし、またしても避けようと思っても体が思うように動かなかった。ああ、また、あの喉の熱さがやってくるのか、そう、悟った瞬間だった。
「おぶ!?」
とんでもない速さで、ルークの横っ面が誰かの手によって殴り飛ばされる。ルークはそのまま5メートル吹っ飛ばされた場所に仰向けに倒れた。
「大丈夫かい!?サトル君?喉の方に異変は?」
「え?...え?」
俺は、問われている意味を全く飲み込めなかった。さっきまでのどの痛みはあったけど、今はなくて、ルークがなぜかリックに殴られていて...もう何が何だかわからなかった。
「ペティーちゃん!早くこっちに!」
「は、はい!」
俺とルークの試合を見ていたペティーがルークに呼び出されると、すぐに俺とルークのもとに走ってくる。ペティーもまた、状況を何もわかっていない様子だった。
「彼の喉元を重点的に、それから体全体を治癒魔法で治療してくれ。できるかい」
「わ、わかりました」
リックはそれだけ言うと、真横に吹っ飛ばされたルークを担ぎ上げると、「ちょっと来い」とそのままどこかへ連れていかれてしまった。ペティーは俺に弛みなく治癒魔法をかけ続けている。
「サトル君、いったい何があったの?」
「それが、俺も何が何だかわからないんだ」
俺は自分の喉を恐る恐る手でなぞる。やはり、さっきまでの焼けるような痛みはどこにもなく、いつものまだ声変わりしていない綺麗な俺の喉がそこにはあった。
「サトル君がルーク君に首あたりを触られて、苦しんでたから、早く助けなきゃ、って思って、そしたら突然ルーク君がリックさんに蹴り飛ばされてたの」
「俺もルークに首をつかまれて、喉に焼けるような痛さを感じてから、いきなりルークが蹴り飛ばされてた」
ついさっきまで感じていたのどの痛みは、ペティーの治癒魔法とは別に完全になくなっている。明らかにおかしな状況には変わりはない。しかし、俺には一つだけこの怪現象を引き起こした原因に心当たりがあった。
「フォーリハルト...」
記憶がなくなる直前に、リックが短く詠唱した"フォーリハルト"と呼ばれる魔法。これが、俺の命の危機を救ってくれた魔法だったのだと、俺は考えることにした。




