1-90章 赤の他人
「ルークは友達と遊ばないのか?平日はいつも何してるんだ」
いつもの休日にお父さんと魔法の練習をしているとお父さんがそう聞いてきた。あれからあの時からさらに1か月たって僕の魔法の腕は少しづつ上達していった。
「ともだちとはあそんでない...ずっとひとりでまほうのれんしゅうしてる」
お父さんが帰ってきてから魔法の上達を自慢したいから僕に友達と遊んでる暇なんてなかった。もっともっと魔法がうまくなってお父さんにもっと褒めてもらいたかった。
「うーん。でも、友達を作ってその子たちと遊ぶのは悪いことじゃない。むしろいいことずくめだ。次お父さんが帰ってくるまにお友達を作ってきなさい」
「でも...」
自信なさげに下を向く僕にお父さんは俺の両肩をガシッとつかんだ。
「大丈夫、怖くなんかない。友達ができたらお父さんが帰ってきたらそのことについて教えてくれ。お父さんもルークの友達の話を聞きたい」
「わ、わかった。ぼくがんばるよ」
俺はお父さんをがっかりさせたくなかったから、その場で友達を作ることを約束した。その次の日僕は早速友達をすることが成功したのが運の尽きだったのかもしれない。
その日の夜、友達から渡された魔法書を借りてきて僕はそれを読み込んだ。最初の方は僕でもできる簡単な魔法が載ってただけだけど、後ろの方のページは少し難しい内容の魔法が書かれていた。
「でも、ぼくがこのまほうをみせたらともだちもよろこぶだろうなー」
僕は難しい魔法をみせて驚く友達の様子を見てにやにやと笑う。魔法自体は自分の靴の摩擦を極限まで少なくして加速する魔法だったが、3日もあれば習得できる魔法だと踏んでいた。
「よーし。がんばるぞ」
僕は気合を入れて魔法書の使い方の項目を熟読する。でも、友達が喜ぶ顔を想像して集中できなかったのはこの時が最初で最後だったのかもしれない。
「ただいまー。おいルーク、どうしたんだ?」
お父さんはリビングで顔をうずめてうずくまる僕のことを見つける。顔をあげた僕はお父さんがとても心配そうに僕のことを見ていた。
「何があったんだ?」
そう言ってお父さんは俺を固い床の上からソファの上に僕の軽い体を持ち上げて座らせた。
「みっかまえくらいにともだちをつくってあそんだんだ。たのしかった」
お父さんは僕に先を強く促すこともせず、ゆっくりと相槌を打つ。
「そのときまほうしょをくれたからぼくはそのむずかしいまほうをみっかかけてれんしゅうした。それで、そのまほうをみせてよろこんでくれるとおもったら、おれらとあそぶよりまほうのほうがだいじなのかよっていわれた。そうだよ、っていったらもうそのこたちとはあそんでもらえなくなった」
僕の告白にお父さんは心底驚いているようだった。お父さんは僕と一緒で魔法が好きだから僕のことをきっとかばってくれるに違いない。そう思っていた。しかし、
「でも、お友達もきっとルークが三日間も遊びに来なかったから心配したんだよ。そういう時はルークが友達に合わせてやらないとダメだぞ」
お父さんが僕じゃなくて、友達のことをかばったことに僕は愕然とした。血のつながった息子より、その息子を傷つけた赤の他人をかばうのかと、僕はその時、初めてお父さんに失望したことをはっきりと覚えている。
「お父さんは僕より友達のことをかばうんだね」
「...え」
何を言われてるのかわからない父親の表情を見るのがこれほど苦痛だと思ったことはない。俺のことなんて所詮休日の暇つぶしの一つだとしか思ってないのだろうと俺は思った。
「もういいよ」
俺はそう吐き捨てると、ズカズカと玄関まで歩いていき、扉を思いっきり開けて家を出て行った。お父さんとはこの日からほとんど顔を合わせなくなった。




