1-89章 昔の記憶
最初のきっかけは、単なる好奇心だとか興味だとかそんなくだらない理由だったと思っている。正直、俺がまだ小さかった時だったからあまり覚えていない。
最初に魔法に触れた記憶は、お父さんが庭で魔法を使ってるのを偶然見かけた時だった。僕は寝ぼけた目をこすりながら玄関の戸を開けた。お父さんは縁側で座禅を組み、目を軽く閉じて意識を何かに集中させていた。
「おとうさん、なにやってるの」
僕はお父さんに何をやってるのかを尋ねた。お父さんはゆっくり俺に振り返ると、
「これはな、弱い魔力でも繊細に魔法を使う訓練をしていたんだ。若いうちはこういう魔法の使い方を覚えた方がいいと言われているんだよ」
僕は今のお父さんの説明なんかより、もっと根本的に惹かれたものがあったことを今でも鮮明に覚えている。それは、
「おとうさん、まほうってなに?ぼくにもおしえてよ!」
「ルークにはまだ早いんじゃないか?でも、少しだけなら教えてあげよう。お母さんには内緒だぞ」
人差し指を口に当てて、「シー」とするお父さんに首を縦に振ると、俺はお父さんとの秘密の「まほう」について教わることに胸が躍ったとそう思っている。これがルーク・リバースが魔法を始めたきっかけだ。
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「おとうさん、やっぱりむずかしいよ」
僕は泣きそうになりそうなところを歯を食いしばって必死にこらえようとする。魔法の練習を初めて一か月が経過したが、なかなかお父さんのように魔法を使うことができなかった。頭の中でお父さんのように魔法を使うことが難しいなんてわかってはいるけれど、それでも、自分が不器用で魔法の上達が遅いことも確かだった。
「そうだな。今日はもうやめにしようか」
休日の時はお父さんは家まで帰ってきては、僕との魔法の練習に一日中付き合ってくれる。今日も今の今まで練習に付き合ってくれて、もうすぐ夕日が沈みそうな時刻まで迫ってきている。
「ううん、やっぱりできるまでやる」
俺はお父さんの制止を振り切って目の前のことに集中する。これは目の前の木の断片を移動させる練習なのだが、1か月間移動させるどころか、持ち上げることすらできなかった。俺は自分の頭の中で木材を端から端に移動させるイメージを作り、魔力を込める。しかし、木材はうんともすんとも言わなかった。すると、お父さんが後ろから俺の両腕をつかむ。
「お父さんがちょっとだけ助けてあげよう。ルーク、しっかり前だけ向いていつも通り自分のイメージ通り魔法を使ってみろ」
俺はお父さんに言われた通り、自分の意識を木材を動かすイメージだけに集中させる。果たしてこれだけでうまくいくのか俺は不安だった。しかし、
「...あ」
僕は目の前の気が少しだけ動いた気がした。風が吹いただけで動いたのかもしれないが、なんとなく僕自身が動かしたようなそんな気がしてならなかった。
「ルーク、今少しだけ木材を動かせてたぞ。やっぱりお前は魔法の才能があるな」
そういうと、お父さんは俺の頭を優しくその大きな手でなでた。
「えへへ。やっぱりぼくおとうさんみたいなまほうしになりたい!」
俺はこの時、はじめてお父さんに魔法師になりたいことを伝えた気がした。しかし、この時のお父さんの表情はほんの一瞬だけ苦虫をつぶしたような悲痛な表情になったと思う。しかし、すぐにいつもの優しいお父さんの表情になると、
「そうだな。お前ならなれるよ。立派な魔法師に」
そういって、お父さんは俺の頭をもう一回なでた。




