1-88章 魔法交流会その32
「俺は自分がお前より魔法力がないことを知っている。でも、情報戦という分野ではお前は俺には勝てなかった。俺をなめて勝負より自分の欲を優先したつけが回ってきただけだ」
「くそが...ふざけやがって」
ルークは自身の肩から出血する血を手で押さえながら俺から距離を取る。俺はもちろん彼に勝ってこの大会を優勝したいという気持ちがあった。しかし、それとは別に彼に対する興味もまた俺は持ち合わせていた。俺は、その隙に地面にある魔力人形を拾い上げる。
「今からお前に二つ質問する。一つは俺にとってはどうでもいい質問。もう一つは俺にとってどうでもよくない質問。どっちから聞きたい?」
「くだらねーな。まだ勝った気で話進めてんじゃねーよ」
「そうじゃないんだ。勝負とは別にお前に聞きたいことがあるんだ。じゃあどうでもいい質問から」
俺は昔から好きなものは最後に残しておく派だった。一人っ子だと自分の好物が兄弟にとられる心配がないから、好物を最後まで取って置ける、という家庭環境がそうさせたのだろう。俺は右手の人差し指を立てる。
「お前のその目。ギフトを持ってるだろ。何で使わないんだ」
「...そんなことかよ。俺のギフトはに人間向きじゃねーんだ。親父に人に対しては使うなって念押しされてるんだよ」
「そうか。じゃあ二つ目」
俺はただ知りたかっただけの答えを右から左へと処理し、本当に聞きたかった質問をする。
「なんで、お前の周りには誰もいないんだ?」
彼は、俺の言葉に驚愕したように目を見開いた。
「俺はずっと疑問だった。お前の魔法力はその年だとほかのだれにも引けを取らない素晴らしい魔法だ。巧みで、とても洗練されていることがよくわかるよ」
俺は自分の魔法を始めた原点を思い出す。最初は魔法の使い方なんて全く分からなかった。でも、ガジャが軽々と魔法を使っていたり、ペティーが自分の想像できない魔法を見せてくれたり、マリンが俺と言い争いながら魔法の使い方を議論したりする毎日はとても楽しい。魔法の力はいつだって俺を魅了してくれた。それが圧倒的な魔法だったからなおさらだった。
「お前も一緒だったはずだ。お前の魔法はルーラルの人を魅了できるほどの魔法のはずだ。でも、お前は今も一人だ」
ルークは誰かと一緒にいるところを見たことがない。無論、今日初めて会っただけで判断材料が少ないだけかもしれないが、あいつは誰かと仲良くするどころか友達すらいないだろう。明らかにルークは意図的に人を避けている節があった。
「その理由が知りたい。お前がなぜずっと一人でいるのかを」
「うるせーよ...お前が俺の何を知ってるんだよ」
気が立って口調が荒ぶるルークの言葉を俺は優しく否定する。
「ううん。違うよ。お前のことを何も知らないから、俺はお前のことを知りたいんだよ。」
「ぁ」
ルークの口の端から、間抜けな声が漏れる。案外こいつも子供っぽいとこもあるんだな、と感心する。
「お前の魔法は強く、巧みで、目を見張るものがあるけど、孤独で誰も寄せ付けない棘もある。だけど、俺に話してくれないか?お前に何で一人で魔法を極めているのかを」
そう言って俺は肩を抑え、跪くルークに手を差し伸べる。今のルークなら心に秘めている孤独の理由を話してくれるような雰囲気があった。しかし、
「...え」
ルークは俺が差し伸べた手を思い切りはたいた。俺の思惑は外れ、ルークはうなるように感情を爆発させる。
「お前、なんかムカつくんだよ。何でも見透かしたように説教たれやがって。俺は自分のことを理解されたいだなんてこれっぽちも思ってねーんだよ!」
ルークは俺がひるんだ一瞬の隙をついて俺の胸倉につかみかかってくる。俺はとっさにその手をよけようとしたが、もう間に合わなかった。




