1-86章魔法交流会その30
「くそ、やっぱりきつい...」
あんだけデカい啖呵を切ったのはいいものの、依然ルークの魔力に押されていた。しかし、防御魔法がじわじわ削られながらも、頭の中では別のことに意識を集中させている。
「なかなかしぶといやつだな」
自分に対して全く攻撃の意志がないルークは目つきの悪い三白眼をすっと細める。そして、
「そういうことか!そうはさせねーよ」
俺の狙いに気づいたのか、ルークは長距離からのスナイプ攻撃をやめて、ものすごい速さで距離を詰めてくる。俺の狙いはさっさと魔力人形を見つけて、試合を終わらせることだった。防御魔法にしかリソースを割かなかったのは魔力人形の波長を探していたからだ。それがルークにも気づかれたのだろう。俺は必死に首を動かし、魔力人形を探す。そして、
「いた!あそこか!」
前方10メートルの草かげに機械的な動きで歩くマジックパペットの姿があった。しかし、その前に立ちふさがるようにルークは俺と魔力人形の間に立つ。
「つまらないことして逃げようとしてんじゃねーよ。お前の魔力が尽きた時がこの試合の終わりだ」
目標が目の前にあるのにこれでは魔力人形をとっての勝利をすることができない。
「なんで俺にそんなに執着するんだ?」
「理由は特にねーよ。お前が一番魔法の使い方がましだと思ったからだ」
時間稼ぎとわかっているのかいないのか、ルークは自分の肩をすくめてそう答える。こいつは魔法に対してそんなに固執する理由があるのだろうか?
「そういえば、初めて会ったときは聞き忘れたが、お前もギフト持ちだったのか」
「まあな。ここでお前に使うことはないだろうけどな」
ルークは自分の左目の下にワンポイントで入っているザリガニのようなタトゥーを触る。まあ、こいつもバルセルクを目指しているわけだから、ギフトを持ってるのも当然か。
「どんなギフトなのか俺に教えろよ」
「今はそんなくだらないことに気にしてる場合じゃねーだろ。自分の置かれてる状況を理解してねーのか?」
確かに、俺は常時攻撃魔法を受け続けて、魔力も体もボロボロだが、ルークは魔力はどれくらいああるかわからないが、まだまだ余裕そうな顔である。
「でも、今回勝つのは俺だ」
「こっから勝てるとでも?魔法は魔法力がすべてだぜ?魔法を鍛えたものが一番強いんだぜ」
「いーや?そんなことはないぜ。魔法に限らず、一番このようで大切なものはなんだかわかるか?」
「いや。お前にはわかるのか?」
「一番大事なこと、それは"情報"だ。知っているだけでこの世ではできることややれることが何倍にも膨れ上がる。敵を知り、己を知れば、百戦危うべからず。今からお前にそれを教えてやる」
そして、俺はルークの正面めがけて攻撃魔法を放つ。しかし、そんな軌道のわかりきった攻撃は避けられないわけがなく、ルークは俺の攻撃を体をひねるだけでかわして見せる。
「おいおい、そんななめた攻撃で俺が倒せるとでも...」
その瞬間、ルークの背後から鋭い光が差し、ルークの右肩に直撃する。ルークは驚愕した表情で自分の右肩から流れ出る血を眺める。
「嘘...だろ...」
俺はルークにできたわずかな隙をもちろん見逃すはずがなかった。俺が魔力人形を探そうとルークが追ってくること。そして、魔力人形を取らずに俺の前に立つことは、俺にとってすべて想定通りの動きだったからだ。




