1-84章 魔法交流会その28
「信じられない...」
彼が見せた一方的な試合は、まさにその一言に尽きるほど圧倒的なものだった。ルーク側はほとんど防御一辺倒だったのに対し、ライアーは終始ルークに攻撃を仕掛けていた。しかし、終わってみれば最後に立っていたのはルークであった。二人の間で埋められないほどの魔法技術の差があるのは火を見るより明らかだった。
「おい、ルーク」
すると、飛行魔法で様子を見ていたリックが空から降りてくる。
「今のはやりすぎだ。相手の戦意をそぐくらい、お前ならわけなかったはずだ」
「俺は最後以外あいつに触れてさえいない、あれが最善だった」
二人は勝負が決したフィールドで互いにライアーを挟むように対峙する。二人の中には俺たちにはわからない険悪な雰囲気が漂っていた。
「もっとうまいやり方があったはずだ。防御魔法もまだまだ穴ばかりだったぞ」
「親父は俺に完璧を求めすぎだろ。俺にはあれが最善だったんだ。もういいだろ」
「おい待てルーク!」
父親の静止に聞く耳を持たないままルークはまたどこかへと行ってしまった。しかし、この親子には俺たちにはわからない確執があるのだということは察することができた。
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結局なんやかんやあって、決勝は俺とルークがそれぞれ戦うことになった。実質最初の一回しか戦ってない俺としては決勝進出は釈然としない結果だが、せっかくここまで来たのだし、自分の魔法がどこまでルークに通用するのか試す絶好の機会である。
「やっぱあいつの魔法えぐいなー。てかあそこまでいったらもはやグロいよなー」
「ルークの奴。あんなに自分の魔法見せびらかして、どうせライアーをからかってたのも自分の魔法を自慢したかったからだろ?」
「まあ、ライアーほどじゃないけどな」
俺が近くを通り過ぎると、さっきのルークとライアーの噂話をしている集団の声が聞こえてきた。俺は偶然聞いたその話に興味を持ち、そこにいた3人に話しかけてみることにした。
「ねえ君たち。ちょっといいかな」
「ん?どうした?」
明らかに俺たちに何の用だよ、という面倒くさそうな目をされたので俺も手短に話す。
「さっきルークのことについて話してたよな?ルーラル村でのあいつの様子を聞いてもいいか?」
「あー、お前ウィットネスの奴か。別にいいぜ」
別に構わないといった様子で胸を叩くと、そいつらはルークについて話し始めた。
「あいつと知りあったのは5年位前だったか。引っ込み思案だったルークを俺たちが一緒に遊びに誘ってやったんだよ。今のあいつからだと想像つかないだろ?」
確かにルークが臆病という話は意外だった。昔からああいう性格なのだと勝手に思っていたがそう言うわけではないようだった。
「案外あいつと遊ぶのも楽しかったからその日から毎日遊んでたよ。そんである日、俺が父さんからもらった簡単な魔法書を持ってきて、こいつらに見せてやったんだよ。といっても魔法書を見ればできる簡単な魔法だったんだけどな」
「でも、その時ひときわその魔法に関心を持ったのはルークだった。俺にその本をくれないか?って言われたから、貰い物だし別にいっかていう感じであいつに渡したよ」
「それから三日間くらいルークは遊びに誘ってもなかなか家から出てこなかった。でも、しばらくしたらあいつの方から遊びに来た。手には俺があげた魔法書をもっていくつか魔法を見せてくれたよ」
ルークは子供のころから魔法に熱心に取り組んでいたのだろう。俺もわからない魔法は魔法書を読んで練習するからルークの気持ちがよくわかった。
「でも、そんなことよりこの3日間どこにいたんだよ、ってあいつにいったらあいつ家で俺の魔法書の魔法を練習してたって言ったんだぜ。俺らと遊ぶことより魔法のほうが大事なのかよって俺たちは言ったよ。そしたらあいつ涙目になってそれから俺たちとは遊ばなくなった」
その子は少し残念そうに伏し目がちに答えた。この子たちにとって魔法というものの優先順位は低く、遊びより魔法を優先したルークに腹を立ててしまったらしい。
「そうだったのか。教えてくれてありがとな」
「おう。そういえばお前、決勝でルークと戦うやつだろ。せいぜい怪我しないように気をつけろよ」
嫌味ではなく、本当に俺を気遣うように声をかけると3人は雑談しながら俺のもとを離れた。ルークの今の話とリックとの会話。ルークとの戦いは、色々な意味で覚悟が必要な試合になるだろう。




