1-83章 魔法交流会その27
強引に対戦カードをひっくり返された今回の試合は、思ったよりも対応が早かった。大方、ルークあたりが父親に話をつけたのだろう。俺はペティーとマリンたちと一緒に試合会場に向かう。
「おーい、息子よー。負けたら承知せんからなー!」
「あ、感じ悪いおっさん」
両脇に使用人をつけて大声で応援しているのは、ライアーの父親であるピーターだ。やたら高そうな装飾品をじゃらアジャラと鳴らす彼は、自分の息子へ檄を飛ばす。
「わかっております。父上!」
ビシッと姿勢を正すライアーはいつもの性格の悪そうな面貌は影を潜め、緊張したようにガチガチに身構えていた。
「それでは、都合により準決勝の対戦カードを変更して行わせていただきます」
対戦カード変更のアナウンスに思ったよりも会場の騒ぎは小さかった。さっきのルークとライアーのやりとりは大半の人間の耳に入っていたため、驚きは少なかったのだろう。
「それでは改めて。ルーク対ライアー。はじめ!」
戦いの掛け声が聞こえたが両者それぞれ動きを見せなかった。とはいっても、かたや一方は緊張や恐怖で動けなくなっていて、かたや一方はそんな隣にいる相手など眼中にないのかボーっと空を見ていると、柵を境に全く対称な出で立ちを見せていた。
「どうした?俺にリベンジするんじゃないのか?」
先に動いたのは空を見たまま、目線だけでライアーを見下ろすルークだった。すらっとした彼の長身から間近で見降ろされるライアーからは、普段のいじめっ子気質は完全に抜け落ちていた。
「勝負を挑んできたのはお前の方だろ?さっさと俺に一回でも攻撃を当ててみろよ」
息がかかるほどの近距離でルークはライアーの耳元でささやいた。すると、ライアーはルークから死角になる位置に攻撃魔法を放つ。無慈悲にルークに放たれた魔法はルークの体を貫き...
「そんなことで俺を出し抜いたつもりか?お前本当にここら辺の名家の息子なのか?」
「ひぃ!?」
ルークは攻撃魔法の方向を見るまでもなく、いとも簡単にそれを防ぐ。まるで、死角から攻撃魔法が放たれることがわかっているかのようなふるまいだ。
「お前みたいな大して魔法も使えないくせに一丁前にプライドの高いやつの考える作戦なんて、たかが知れてるんだよ」
「う...うるせーよ!それ以上しゃべるんじゃねー!」
プライドを目の前でずたずたに引き裂かれ、激高したライアーはやたらめったらにルークに攻撃魔法を放った。しかし、ルークは不規則に飛んでくる魔法を、躱し、受け流し、防ぎながらライアーの攻撃魔法をやり過ごしている。
「とんでもない技量だな」
俺は目の前で飛んでくる魔法をはじくルークの技量に目を奪われる。軌道が読めないライアーの魔法は決して出力が低いわけではない。それでもルークはその物量を涼しい顔で、冷静に受け流す。
「あんなの勝負にすらなってないわね。ルークはあいつで遊んでるのよ。自分の魔法力を上げるための触媒として」
まあ、あたしだったらライアーくらいには勝てるけど、と付け足したマリンもやはり俺と同意見だった。あんなものは勝負とは言わない。行ってしまえば、サーカスの人間と動物のショーのように見世物と同じだ。ルークが人間でライアーが動物。主人公の引き立て役のようにライアーはあの舞台で踊っているだけだった。そして、ショーは唐突のフィナーレを迎える。
「もうお前と遊ぶのは飽きたわ」
ルークはライアーの攻撃を受けると、その波状攻撃の中をかいくぐり、ライアーに近づく。ルークは一瞬でライアーの背後に回り、一瞬で首をつかむ。
「くっそ...」
「どうだ?普段魔法でいじめている側からいじめられる側になった気分は?自分の無力さで死にたくなったか?ああ?」
振り向くことすら許されず、ルークはライアーに罵声の言葉を浴びせる。
「最後の忠告だ。頭下げて参りました、っていうなら今のうちだぜ」
しかし、ライアーは振り向かずにただ黙って身動き一つしない。しかし、
「俺は...お前よりも優秀な魔法師なんだよ!邪魔すんじゃねー!」
そう叫ぶと最後の魔力を振り絞って超至近距離の攻撃魔法を放つ。
「そうか。シンプルに残念だ」
そして、ルークは自分の手から微量の電気をライアーに流すと、ライアーは気絶してその場に倒れた。そして、ルークに放たれた魔法は、ルークに到達する前にライアーの意識と同時に霧散した。ルークが一方的にライアーを圧倒した姿は、人々を圧巻させるには十分すぎるほどだった。




