1-80章 魔法交流会その24
会場に到着すると、トンプとライアーの二人はすでに準備が整っており、あとは開始の合図を待つだけとなっていた。
「あの二人、どっちが勝つと思う」
頬の傷を気にしているのか、マリンが傷口の下あたりをさすりながらどっちが勝つと思うか俺に聞く。
「さあな。ギフトがある分、ライアーのほうが有利である感は否めない。でも...」
俺は、数分前にトンプと交わしたやりとりを思い出していた。
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「飛翔...それがあいつの持っているギフトだ」
「なるほど...どんなギフトかわかるか?」
「飛行魔法に似たギフトらしい。俺もガジャから聞いただけだから詳しくはわからないが...参考になるか?」
しばらく思案しているのか、トンプは黙ったままうつむいている。数秒後、彼は顔をあげると、
「わかった。お前の情報ありがたく参考にさせてもらう」
と不敵に笑う彼の表情は、いつもウィットネスで見るいたずら好きな彼の表情そのままだった。
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「あいつなら...何かやってくれるだろう」
俺は根拠のない期待を勝手に彼にかけ、無事勝ってくれることを願う。そして、そうこうしているうちに審判であるリックがその右手を高く上げる。
「それでは第3試合。トンプ対ライアーの対決。はじめ!」
短く言われた開始の合図とほぼ同時に、トンプは先手必勝とばかりにライアーに近づき、攻撃魔法を放つ。
やはり、ライアーに飛翔を使わせないために、トンプは接近しつつ魔法を放ち間髪入れずに攻撃する。
「なんでトンプ君は魔力人形を取りにいかないの?」
最初からライアーに攻撃を仕掛けるトンプの意図がわからないのか、ペティーが俺の袖を引く。
「おそらくだけど、最初に飛翔を使われたが最後、上から魔法による妨害をされ続けてトンプ側がじり貧になる。だから先手必勝でライアーの出鼻をくじいて、先にライアーを倒そうとしてるんだと思う」
俺はなるべくペティーに伝わるようにかみ砕いて説明する。ペティーは「なるほど...」とうなずいていたが、果たしてわかっているのだろうか?
そうこうしているうちに、戦局は刻一刻と動いている。ライアーはトンプの攻撃魔法に防戦一方だが、全く焦った様子を見せていない。それどころか、全く攻撃を通すことができず焦り始めているトンプのことをあざ笑う余裕すら彼は見せている。ライアーの方はいったい何を狙っているのか。その答えは思ったより早くに訪れた。
「はぁ...はぁ...」
さすがに魔力を消費しすぎたのかトンプが肩で息をし始める。一方のライアーは自分が着ているきらびやかな服に汚れ一つつけずに涼しい顔をしている。
「もう終わりなのか?思ったよりもフィナーレは早かったな」
そういって、彼はゆっくりと空へ舞い上がると、上昇しながら片手で手のひらサイズの炎を作り出して見せる。
「...!?」
トンプは空を飛んでいる彼の方は見ておらず、彼の手の中にある小さな炎を見ている。ライアーはその表情が面白かったのか、高らかに嘲笑すると、
「お前そんなに火が怖いのか?安心しろ。この炎は本物じゃない」
そう言ってライアーは彼の足や腕、腹筋をめがけて魔法を放っていく。無論、魔力をほとんど使いきっているトンプに抗うすべなどもう残っていなかった。一方的な攻撃に会場中もすっかり静まりかえっていた。
「もう終わりだ。彼はすでに魔力切れだ」
「チッ、口ほどにもないやつだな」
ライアーは傷だらけになったトンプの横に唾を吐き捨てると、そのまま何も言わず立ち去った。無論、彼の勝利に大きな歓声などは微塵も起きるはずもなかった。
「くそが...」
彼は、地面に自分の拳を強く叩きつけていた。彼の悔しそうな表情は俺にはとても印象的に映り込んだ。




