1-77章 魔法交流会その21
「第2試合。勝者はルーク!!」
あまりの一方的な試合展開に会場中は異様な気配に包まれていた。無論それは魔法を使える者同士の戦い、勝負は拮抗するかと思われたが、結果としては一瞬でかたが付いた。マリンはしばらくボーっとその場で立ち尽くしていたが、やがてそのまま歩き出すと、人混みをかき分けて俺たちのほうまでやってくる。
「マリンちゃん、顔!!」
落ち込んだ表情のマリンの横顔には薄く切れたのか、マリンのの健康的な肌を伝うように血が流れていた。ペティーが咄嗟に治癒魔法を使おうとする手をマリンは制止した。マリンは右手で傷口を触り、手についた血をじっと眺めた。
「これくらいなら平気。それよりも...」
マリンは俺の肩をつかむと、ぐっと自分のほうに引き寄せ、耳元で、
「あいつの魔法技術は普通じゃない。あいつは間違いなくあたしを殺す気でやりに来てた。あたしが生きてるのはあいつの気まぐれか、リックさんの前だったからかもね。それに、あいつはあたしと戦うよりもまず、魔力人形を探していた。あいつには、あたしなんて眼中になかった」
そう言うと、今度は俺の肩を突き飛ばして自分の右手を腰に当てる。
「あんたがあいつと当たるとしたら決勝になるわね。それまで対策立てないとあいつにすぐやられるわよ」
そう言い残すとマリンは俺たちと別れて、どこかへと言ってしまった。ここには再び俺とペティーの二人だけになってしまった。
「マリンちゃん。大丈夫かな...」
「あいつなら大丈夫だろう。何事も楽観的ですぐに切替のできる奴だ。それに...」
俺は3人での特訓の日々を回想した。
「さすがに相手が悪すぎた。マリンが弱いだけじゃないよ」
「それじゃあ...」
ペティーは俺の顔を間近で覗き込んだ。俺は気持ち腰を後ろにそらしてペティーのことを避けてしまった。
「ルーク君になんであんなに魔法が上手なのか聞きにいかない?」
と突拍子もない提案をしてくる。しかし、
「い、いやあいつに話しかけるのはちょっと怖いというか、それにあいつどこにいるかわからないし、」
というのも、ルークはマリンとの勝負が終わるや否や、すぐに会場を立ち去りどこかへ行ってしまった。自由気ままで、猫のようにどこかへ行ってしまう彼が今どこにいるかなんてどこにもわからない。
「それもそっか。私、ルーク君と魔法のお話したかったなー」
「天才同士ひかれあうものがあるんだな...」
ペティーはすこぶる残念そうにしていたが、実際彼の居場所がわからないのも事実だったため、ペティーもこれ以上何も言わなかった。この後は魔法の初心者の子同士の対決が終わったらいよいよ準決勝となる。俺も他人のことを心配している場合ではない。
「おーい、ちょっと待てー!」
上空から何やら聞き覚えのある声が聞こえてくる。その声の主は茶色にワックスがコーディングされたような上品な杖を箒代わりにして、俺たちの近くに舞い降りた。そいつは俺たちがよく知る人物であった。
「ライアー...」
天空から華麗に登場したライアーは上空で乱れた髪を、胸ポケットに入れてある櫛を使って優雅に整える。
「誰の許可を取ってこの大会を開いているんだ。今からこの僕もこの大会に参加させてもらう!」
堂々とそう宣言したライアーに俺は困惑と警戒の構えを見せた。ペティーが俺の袖をつかむ力が少し強くなった気がした。




