1-76章 魔法交流会その20
いきなりの先制攻撃に会場中にはどよめきが起こった。それも無理はない。開始早々対戦相手を魔法で消し飛ばすなんて常人では考えられないことである。しかし、
「いきなり最初からパナしてくるなんて、お前頭のねじ外れてんのか?」
右手で自分の首をさすりながら余裕の表情でそこにたたずんでいた。この立ち振る舞いにはこれまた会場中が沸き上がった。
「サトル君、あれって...」
「うん。完璧なタイミングの防御魔法だ。あんなの...」
あんなのは最初から攻撃が来るとわかってないと発動が間に合わない。この時点でルークが只者じゃないとわかる。一方のマリンは自分のショートパンツについた砂塵を手で払いながらつぶやく。
「あんた。なかなかやるじゃない。リックさんの息子は伊達じゃなわね」
「親父はどうでもいいだろ」
そう吐き捨てるとマリンに背を向けてそのまま歩いていく。
「は!?ちょっとどこ行くのよ?」
マリンは自分を無視して歩き去っていくルークに必死に呼びかける。しかし、
「こんなくだらないことさっさと終わらせる。お前らの茶番なんかに付き合ってやるほど俺は暇じゃない」
ルークはマリンの目を見ることもせず、冷たくそう言い放った。しかし、そんな言葉でマリンが納得してはいそうですか、というはずもなく、
「だったら、あんたが振り向くまでこっちも好き勝手やらせてもらうわ!!」
そして、先ほどよりもサイズは小さい火の玉を周りに生み出すと、それを次々とルークの方に放っていく。それをルークは避けもせずに、真正面から受け止めた。数十発は打ち込んだ火の玉にさすがのルークもやられたか?とそう思ったつかの間、
「次やったら本気でやりに行く。3度目はないぞ」
またも無傷で今の猛攻を耐え忍んだ。2回も自分の攻撃を耐えられたマリンもさすがに驚きの表情を見せる。しかし、マリンは自分が向けた攻撃の意志に全く反応を示さないルークに怒りの表情を見せる。
「何よあんた...」
マリンは自分の両手を強く握りこむと、遠ざかるルークの背中に向かって叫んだ。
「あたしと戦いなさいよ!この低テンションナルシスト!さもないとあんたのことあたしの炎で焼き尽くすわよ!」
マリンの必死に叫びもむなしく、ルークはそのままスタスタと歩いていく。
「くそ...こうなったら...」
マリンは自分が見向きもされないことをいいことに、魔力をためて今までに見たこともないほどの大きな球を作り出していく。周りからは恐怖と衝撃が混じったような声が聞こえてくるがルークはそれを見向きもしない。そして、上空に飛び審判であるリックも全くそれを止める気配はない。自分の息子なら大丈夫だと高をくくっているのだろうか。魔力を10秒ほどためたマリンの火球は、直径15メートルほどもありそうなほどの巨大なものとなる。以前ルークはそんなことを気にもせずキョロキョロと周りを見ている。
「これでも食らって、あたしと戦いなさい!!」
そう言い放ちマリンの巨大な火球がルークめがけて投げ飛ばされる。何かに気が付いてしゃがみこんだその瞬間にルークに火球が激突する。マリンの容赦ない攻撃にルークも今度こそただでは済まない。そう思ったが、異世界物のお約束。そんな都合よく物事が進むことはない。
「3度目はない。俺は忠告をしたからな」
拭きあがる土煙の中から黒い人影がそういうと、ルークは一蹴りで一瞬でマリンと距離を詰めた。マリンが慌ててルークと距離を離そうとしたがもう間に合わない。ルークの手に持たれている鈍く光る透明な刃がマリンの横を通り過ぎる。そして、
「これを見つけたら終わりだろ。ほらよ」
空中に舞うリックに魔力人形を放り投げると、ルークはそのままその場を立ち去った。




