1-75章 魔法交流会その19
「お疲れ、サトル君」
「うんお疲れ。何とか勝てたよ」
試合が終わり、フィールドの外で待ってくれていたペティーと合流する。ペティーは両手を前面に出してきたので、俺もそれに合わせてペティーとハイタッチをした。
「マリンはもう向かったの?」
「うん。かなり張り切ってたみたいだし、調子も良さげだったよ」
とマリンの様子を嬉しそうに話した。マリンも今回のマリックをある理由から楽しみにしていた。それが"魔法経験者であれば魔法による相手への妨害が可能"というところだった。いわば、魔法を扱える者同士であれば、魔法を使って戦えるといういわゆる抜け道のようなルールにマリンも喜んでいた。これは魔法の初心者を守れるルールにもなっているため、一概に悪いとは言えないものなのだが、
「なんでああもマリンは魔法で戦いたがるのか...」
「ああ、それはたぶん夜の獅子団の戦いぶりを見てるからだと思うよ」
マリンも戦闘狂ぶりに心当たりがあるのか、ペティーは俺の疑問に答えるため話を続ける。
「夜の獅子団はバルセルクが保有する世界最高の魔法実働部隊で、数々の上級魔獣や犯罪者の討伐や確保を行っている組織なの。子供であればその活躍にあこがれるのも無理はないよ」
夜の獅子団はいわゆる、警察と軍隊の両方の特性をもつこの世界の武力組織ということらしい。そういうことであれば、マリンがバルセルクを目指して、夜の獅子団に入隊しようと考えるのもうなずける。
「そう考えると、俺はこの世界のこと全然知らないんだな...」
「サトル君は夜の獅子団の戦闘を見たことがないの?」
「俺は...見たことがないな。なんせこの土地じゃないところで育ったからな」
「へえー。私もサトル君の故郷にいつか行ってみたいな」
「うん...いつか俺の故郷も見てほしいな」
俺の故郷なんてこことはまるで違う、背が高い建物が立ち並び、街の空気がまずくて、夜でも星の輝きなんてまるで感じられない、そんな街だ。でも、40年近く住んだ街でもあるため、なんだかんだ愛着はあった。でも、ペティーにその光景を見せられることはないだろう。なんせここと日本では文字どり「次元」違う世界線なのだから。
「そうだ。マリンちゃんの試合もうすぐ始まるよ。早くいかないと」
慌てたように駆け出すペティーが俺の手を引いて一緒に駆け出す。もし、ペティーと俺が日本で出会ったら今のように楽しく一緒にいられただろうか。それとも、仕事に忙殺されて彼女のことをないがしろにしてしまうだろうか。俺は不器用な人間だから、なんとなく後者の人間になってしまうだろう。
「どうしたの。サトル君?」
俺の手を引くペティーは立ち止まり、俺の顔を覗き込んだ。ペティーの整った眉毛がわずかに動き、その動きに思わず俺は目を泳がせてしまう。
「そ、それよりマリンの相手、あのルークとかいうやつだろ。早く見に行こう」
「うん。そうだね!」
なんとかペティーのことをごまかして俺はペティーと一緒に特設フィールドへと向かった。
会場につくと、まだ試合は始まっておらず、会場は今回の優勝候補の二人の対決を刻一刻と待ち望んでいた。
「よかった。まだ始まってないみたいだね」
「そうだね。間に合ってよかった」
スタート地点には、マリンとルークが二人並んで立っている。マリンは今回、ルークに対して十中八九勝負を仕掛けるだろうか、リックの息子の実力はいかに。
「それでは第2試合。ルーク対マリン。はじめ!!」
リックの合図が会場中に響いてすぐに、マリンが隣にいたルークと距離をとる。そして、手の中で大きな火の玉を作り出すと、
「これでも食らいな!!」
と直径10メートルはありそうな火の玉をルークに向かって放り投げた。ルークはそれを真正面から受け、ルークの周りに盛大に砂塵が吹き荒れた。




