1-74章 魔法交流会その18
俺は身を低くして魔力人形がどこにあるかを探す。魔力の波は頭の中をゆったりと流れていて、心地よい感覚が体の中にあふれる。分かりやすく言えば、オルゴールのようなものだと俺は思った。俺は子供のころに誕生日プレゼントでもらった機械仕掛けのオルゴールのことをふと思い出した。当時はオルゴールなんてものは物珍しかったため、何回もねじを巻き直してはオルゴールの奏でる音色を聞いていたものだ。
「ってそんな悠長なことしてられる場合じゃないな」
若いころの感傷に浸るのも悪くないが、今は試合中であるため気を抜いていられる場合ではない。おまけに後ろからはガサガサと草むらを分けていく音も聞こえてくる。
「彼もこの近くまで来たか」
俺とは反対側をある程度探し終えたのか、シレッタがこちらまで魔力人形を探しに来ていた。ということはやはり俺の近くに魔力人形があるという目星は着いた。俺は魔力の波を感じた場所にゆっくりと近づいていく。次第に波の強弱は近くまで来て、頭で感じる魔力探知はもうこのあたりに魔力人形があると訴え続けていた。今俺がいるあたりには、背の高い木が乱立しており、鬱蒼とした雰囲気があたりを支配している。そして、
「!!」
俺は何となくの魔力の感じた方向に歩いていくと、草むらの中をガサガサと歩く何かがいることが分かった。恐る恐る近づくと、そこには機械仕掛けの人形のようにてくてく歩く魔力人形があった。デザインはつぎはぎのぬいぐるみみたいな感じで若干不気味だったが、魔力人形はこれで間違いないだろう。俺がこそこそと近づいていくと魔力人形と俺の目がばっちりと合った。魔力人形は俺のを見つけたその瞬間、一目散に逃げだした。
「あ!おい!」
逃げる魔力人形を俺は必死に追いかける。足はそこまで速くないが、小回りは聞くようで木や草の間を器用に避けて俺もなかなか追いつけない。
「こうなったら...」
俺は近くの草に魔法を作用させて、魔力人形を足止めさせる。生い茂る草は意志を持ったかのように魔力人形の前に立ちはだかる。魔力人形は自分の行く手を阻まれ、困ったようにあたふたし始めた。
「そこだ!!」
立ち往生している魔力人形をダイブしながら確保した俺は全身泥だらけになる。しかし、やっとの思いで魔力人形の確保に成功した。そして、俺は浮遊魔法で審判をしているリックに向けて魔力人形を掲げた。
「1回戦目終了!勝者サトル!」
記念すべき第1試合が終わり、観戦していた観衆からは大きな歓声が送られた。あと少しのところまで迫っていたシレッタは悔しそうに顔をゆがませた。
「早いな...当てずっぽうで探してみたがさすがに厳しいな...」
「でも、近くで感じたら違いがわかるだろ?」
そういって俺は魔力人形をシレッタの前に差し出した。
「...確かに魔力の波がわからなくもないが、初心者にはこれは難しいな。完敗だ」
「いや、初心者で魔力探知できるきみは才能があるよ。こちらこそありがとう」
短い戦いだったが、相手への賞賛も忘れない彼の行動に感心し、俺は握手を求めた。彼はそれに快く応じ、観衆からは大きな拍手が向けられた。




