1-69章 魔法交流会その13
「それでは、玉入れの集計を今から行いたいと思います」
リックが前に出てきたとき、会場が少しざわついた。おそらく結果発表ではなく、集計という言葉から居間の待ち時間はなんだったんだ、という疑問の表れだろう。
「今回の講師の一人でもあるサトル君の提案により、特殊な集計方法で結果発表を行っていこうと思います」
「特殊なって...そんなたいそうなものでもないんだけどな...」
少しばかりハードルをあげられた気がしなくもないが、気にしてもしょうがないので俺はその場で立ち上がり籠の下へと足を運ぶ。
「今から玉入れの球の集計を行っていきます。数が多いため最初のほうは10個ずつまとめて計測していこうと思います。玉の数が少なくなってきたら1個ずつ集計します。数えるとき、みんなで一緒に声を出して数えてほしいです」
俺の説明を聞き、またもそれぞれのチームでひそひそと会話が起きていた。やはりこのやり方はこの世界ではマイナーどころか、知られていない文化なのかもしれない。そして、ペティーとマリンも前に出てくると、籠の中にあるボールをそれぞれ10個まとめて魔法で取り出す。
「このように10個まとめて取り出すので10刻みで声を出してください。俺の後に続いてください」
そして、魔法で浮かせた球を宙に優しく放り投げる。
「じゅうー!」
その言葉の後に、さすがはまだ反抗期を迎えていない子供たちと言ったところか、大きな声で「じゅうー!」と大きな声で答えてくれる。以降はこの工程を繰り返していく。この数え方の盛り上がり方も、現世と同じくらいの盛り上がり方を見せて、80個目には会場中がかなりの盛り上がり方を見せていた。
「サトル君、私たちの球、あと少しになってきた」
「あたしもよ」
「そしたら、ここからは一つずつ数えていこう」
二人が同時にうなずくと、前で固唾を飲んで見守っている子供たちにも同様の説明する。結果発表もいよいよ大詰めと言ったところで、会場のボルテージは極限まで高まっていた。
「それではいきます。いーち!」
さっきと同じ要領で、1つずつ数えていく。2つ、3つと重ねていくが、ペティーの方もマリンの方も終わる気配はなかった。
「まずいな...」
そんな中、俺のチームの玉の数は残り二つとなっていた。果たしてペティーとマリンはあと何個なのだろうか。
「はーち!」
大地を震わすほどの大声が響くが、まだ二人とも球があるようだった。俺は最後の球を持ち上げると、最後は高らかに放り投げた。
「きゅうー!」
俺たちのチームの記録は89個となった。そして、みんなに空になった籠を見せる。二人はどうだろうか、と見まわすと、
「私も終わりだわ...」
「あたしも...」
なんと、3人とも89個という同じ数で終わっていたのだった。確かに二人の籠の中は空っぽで数え間違いもないため、正真正銘の同点フィニッシュとなった。
「3チームとも結果は89個の引き分けとなりました!」
「おー!お?」
「えー!」
と喜んでいいのか悪いのかわからない声と、不満を漏らす声が会場の空気を占める。結果としては三者痛み分けの微妙な結果になってしまったが、
「それでは3名の先生のにそれぞれトロフィーを授与します!」
といって、リックはテントから出てくるガジャに道を譲った。ガジャの前には3つの光り輝くトロフィーがあり、俺たちは慌てて、トロフィー授与のために姿勢を正す。
「今回は得点こそ同じだったもののそれぞれのがそれぞれのやり方で魔法を教えて、楽しさをここにいる皆に伝えることができた。その感謝と努力を称してこれを贈呈する」
そういって俺たち3人は同時に赤ちゃんほどの大きさがあるトロフィーを渡され、会場からは惜しみない拍手を送られる。
「最後になんか適当にしめてくれ」
「え!?丸投げですか」
最後の最後に適当なガジャを尻目に、俺はとっさに最後の言葉を考える。
「えー...今回は皆さんに魔法の楽しさを教えるために僕たち3人が力不足ながらも、先生として皆さんに魔法を教えてきました。いろいろな苦難や魔法の難しさとは別に、魔法が自由で楽しいものだと少しでも伝えることができたと思います。今日という日が皆さんの人生のなかの素晴らしい思い出の一つになることを願っています」
そういって最後を締めると、周りから惜しみないスタンディングオベーションをもらうことができた。今俺は観客のあふれる熱に充てられて、この熱狂が悪くはないと感じていた。




